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人間開発報告書2004年版─この多様な世界で文化の自由を
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・ | 移民は同化せず、受け入れ国の中心的価値を拒絶する。 |
・ | 受け入れ国の文化と「異質の」文化は衝突し、必然的に社会的紛争につながる。 |
・ | 移民の文化は、後進的かつ独裁主義的なことが多く、それらの文化を包含することは、民主主義の弱体化と、経済的進歩の遅滞を招きかねない。 |
これまで国家は、移民に対して「差異主義(differentialism)」と同化という2つの手法を用いて対応してきた。前者は、1960年代から70年代にかけてのドイツや今日のサウジアラビアのように、受け入れ国の人々と新参者である移民との間に明確な境界線を保ち、彼らの集団を別のコミュニティとして扱うものである。一方後者は、米国の「人種のるつぼ」の精神が示すように、移民がより「自分たちのように」なることを求めるものである。
報告書は、これらの2つの手法について、「今日の多様な社会においては、差異への尊重と結束への取り組みを築き上げる必要があり、不十分である。」と主張する。廉価な国際通信と移動手段により、移民が出身国との接触を保つことははるかに容易になった。報告書は、多文化主義が「多様性の価値を認識し、複数のアイデンティティを支持する、移民融合のための第三の手法」であるとの考えを示している。しかしその一方で、「多文化主義とは、社会内部の異なる価値体系および文化的慣行を認めるにとどまらず、人権、法の支配、ジェンダー平等、多様性と寛容といった、核心的で妥協できない価値観に対し、共通の取り組みを行うことでもある」と指摘している。
そのための解決策とは、移民を禁止したり、多様性を制限することではなく、より包括的で多様な社会を築き上げることである。紛争を引き起こすのは、文化的アイデンティティの抑圧であり、多様性それ自体ではない、と報告書は論じている。
「地域のアイデンティティの保護か、移民、外国映画や知識、資本などの国際的な流れに対する開放的政策か、いずれかを選択する必要はない」とサキコ・フクダ・パー氏は語る。「新しい人々、文化、思想に対して国境を開放する一方で、同時に国家のアイデンティティを保護し、選択を狭めるのではなく拡大するような政策をつくることこそが、今後の課題である。」
以上
本報告書について: 1990年以降、「人間開発報告書」は国連開発計画 (UNDP) の委託を受けて毎年作成され、独立した専門家チームが世界的に注目される主要な問題を検討してきた。学界、政界、市民社会の指導的立場の人々による世界的な諮問ネットワークが、本報告書で発表される分析と提言を支持するために、データ、見解、最善の慣行を提供している。人間開発の概念は、人間の進歩の尺度として1人当たり所得、人的資源開発、基本的ニーズを超えたところを見据え、人間の自由、尊厳、人間の活動などの要素、すなわち開発における人々の役割も評価する。『人間開発報告書2004』は、開発とは、単なる国民所得を上昇させることではなく、最終的には「人間の選択肢を拡大するプロセス」であると論じている。