ターゲット1-A: 2015年までに1日1ドル未満で生活する人々の数を半減させる。
Human Security Unit,the United Nations;Photograph by Julie Pudlowski
「貧困とは、ひもじいこと、孤独なこと、夜になっても帰るところがないこと、はく奪状態にさらされていること、差別されること、虐待されること、読み書きができないこと」
ガイアナの未婚の母親
「貧困は犯罪である。なぜなら人が人であることを許されないから。われわれ全人類を最も冷酷に否定するものである」
コロンビアの教育者
「富はわれわれが掛けている毛布である。貧困とはその毛布がはぎ取られることだ」
ボツワナのNGOメンバー
(『人間開発報告書1997年版:貧困と人間開発』より)
2005年の時点で、サハラ以南アフリカの人々は2人に1人の割合で1日1.25ドル以下の生活を余儀なくされています(途上国全体では4人に1人)。90年以後、全体に占める割合は改善傾向にありますが、人口増加により、絶対数は1億人も増えています。
まずしいということは、さまざまな問題を引き起こします。十分な食べ物と栄養をとることが難しかったり、きれいな水を利用できなかったり、学校に通えなかったり、病気になっても病院に行けなかったり、また読み書きができずに十分な意思疎通が難しくなる可能性があります。また、そうした事情から、安定した収入を得たり、社会の一員として意思決定に参加したりできず、日々を生き延びることに精いっぱいになり、その結果、貧困状態から抜け出すことが難しくなります。
2007年や石油・食料価格の高騰や2008年に発生した世界規模の経済危機の結果、まずしい人々の生活はより苦しくなり、失業したり家族からの仕送りが減ったりして、さらに多くの人々が、厳しい状況におかれています。
さらに、紛争が原因で、一家を支える働き手を失ったり、長年住み慣れた家を追われたりして、まずしい状態に陥ることもあります。
貧困には、特定のグループ内における相対的なまずしさ(分配の問題)と、絶対的なまずしさ(欠乏の問題)があります。世界銀行は、絶対的なまずしさを測るための国際的な水準として、一日1.25ドルを「貧困ライン」と定め、それ以下で生活する人々を貧困人口と呼んでいます。
所得や消費の水準は、絶対的にまずしい人々の数や困窮の度合いを把握し、貧困削減の進み具合を可視化するうえで有用ですが、それだけではまずしさのすべての側面を捉えることはできません。人間が生きていくためには、個人の所得のみならず、基礎的医療や教育といった必要最低限のニーズ(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)が満たされることも不可欠です。
経済学者のアマルティア・センが提唱し、UNDPが開発へのアプローチとして採用している人間開発(Human Development)という考え方は、貧困と能力の関係にも着目しています。生活に困っているだけでなく、健康を害して長生きできなかったり、教育を受けられず知識を得て活用するすべを知らなかったり、社会の一員として認められず自分の人生を左右する重要な意思決定に参加できないことも、人々から尊厳や価値のある人生をおくる機会を奪い、まずしさに追いやってしまうという考え方です。UNDPは1990年以来、人間開発の度合いを測る「人間開発指数(Human Development Index:HDI)」という指標の国別動向を発表する一方、このようなまずしさの状態(はく奪状態)を数値化するために、1997年に「人間貧困指数(Human Poverty Index:HPI)」を発表しました。人間開発指数と人間貧困指数は毎年『人間開発報告書(Human Development Report)』で公開されています。