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ニュースルーム −プレスリリース−

2004年02月02日

防災レポート「災害リスクの軽減に向けて:開発に課せられた課題」、UNDPから発表される

 UNDPは2月2日、米ワシントンにおいて、防災に関する新しいレポート「災害リスクの軽減に向けて:開発に課せられた課題(Reducing Disaster Risk: A challenge for Development)」を発表しました。本レポートは、UNDP主導のもと、国連・政府諸機関、NGOおよび学者からなる有識者グループによって実施され、1980-2000年に起こった自然災害が与える世界的インパクトに関する調査をまとめたもので、自然災害の脅威、リスク、危険度の世界的な傾向に関して従来にない包括的な調査を実施し、死と破壊は回避可能であるという議論を展開している点において、全く新しいタイプの報告書であるといえます。

 地震、台風、洪水や旱魃といった自然災害により、100ヵ国以上に居住する数十億の人々が周期的に被害を受けています。2003年12月6日にイランの都市バンで発生した地震で、4万人ともいわれる命が奪われたのは、まだ記憶に新しいところです。レポートによれば、1980年から2000年の期間において自然災害が原因で失われた命は平均一日あたり184名、合計150万人に達しています。さらに注目すべきは、被災人口が同等である場合においても、富める国よりも貧しい国のほうが、はるかに高い死亡率を示しているという点です。本レポートは、グローバルなコミュニティーが現在直面している切実な課題、「潜在的な脅威を考慮した政策策定を通じて、災害の予知、ひいては災害のリスク管理および軽減をいかにして実現できるか」という課題に考察を加えています。また、災害危機管理とミレニアム開発目標(MDGs)の統合によるしかるべき開発政策の特定を通じ、災害リスク軽減の道を探っています。

 さらに、このレポートの中核をなすのがディザスター・リスク・インデックス(DRI:災害リスク指数)です。同指数は、200以上の国と地域を対象に、一定の人口における被災者の割合を国別に比較し、地理情報システム上でマッピングすることで、physical exposure levels(被災人口レヴェル)とrelative vulnerability(相対的危険度)を示しています。

 まず、1980年から2000年の期間における自然災害に起因する死亡者数を分析することで、自然災害の種類別に、国ごとの災害危険度の比較が可能となりました。地震を例にとれば、イランでは1980年から2000年までの調査対象期間中、被災者100万人あたりの年間死亡者数が1,074人と、米国の同0.97人と比較してきわめて高い数値を示しています。これにより、イランがアメリカの1000倍、日本と比較しても100倍以上という高い地震災害危険度を示していることが明らかとなります。

 さらにレポートでは、危険度の数値に開発プロセスが及ぼす影響を特定するために、国別のリスク・レベルを社会、経済、環境に関する20 あまりの指数と比較しています。この結果、地震による災害リスクと、急速に都市化を遂げつつある中位開発途上国でみられるような都市部の急拡大との間には、強力な相関関係が認められることが明らかとなりました。これは、都市部急拡大の過程においては、適切な建築基準や土地使用計画が適用されず、都市の中心部に取り残された古い家屋の密集地帯が荒廃する例が多くみられますが、これらはすべて地震の災害リスクを高める要因となることが明らかにされています。

 このようにDRIは、地震、台風、洪水、旱魃といったそれぞれの自然災害ごとに人間が被る危険性を国別比較することで、初めてグローバルな災害リスク要因の評価・分析が実現するとともに、このリスクの軽減に寄与しうるような開発要因が割り出しているという点で、従来にない画期的な視点を提示しているといえます。

以上

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