2007年06月07日
MDGカーボン・ファシリティの設立について
国連開発計画(UNDP)と保険・金融業大手のFortis社は6月5日、広大な温室効果ガス排出権取引市場を利用し、革新的かつ持続可能な開発を途上国にもたらすことを目的としたMDG カーボン・ファシリティの設立と、Fortis社をUNDPのMDGカーボン・ファシリティの金融サービス提供者とすることで合意した旨発表しました。
G8サミット直前にベルリンで発表された両者の合意によると、UNDPは開発途上国の温室効果ガス排出を削減するためのプロジェクトを通じて京都議定書の規定を満たし、持続可能な環境と人間開発に向けた恩恵をもたらすことを目指し、支援を行います。Fortis社はプロジェクトで生じた温室効果ガスの削減量に応じた排出権の購入と販売を行います。開発途上国はこの取引によって得た利益を、更なる投資や開発の促進のために活用することができます。
このファシリティの名前にもなっているMDGとはミレニアム開発目標(MDGs)のことで、2015年までに世界の貧困削減と保健、教育、環境と平等の分野で大きな進歩を目指す国際社会の開発目標です。
「今年、私たちは2015年のMDGs達成期限の中間点に位置し、期限内に目標を達成し、持続可能な人間開発を推進するためには民間セクターとの連携が必須なのは明らかです。私たちはFortis社のような著名なパートナーと一緒に、排出権取引市場の変革や気候変動の緩和、そして全ての人々のための持続可能な未来の実現に取り組むことができることを大変嬉しく思っています」とケマル・デルビシュUNDP総裁は述べています。
Fortis社のCEO(最高経営責任者)ジャン・ポール・ヴォトロン氏は「MDGカーボン・ファシリティは私たちにとっても非常に興味深く、双方にとって有益な機会だと考えています。このファシリティは持続可能な開発に大きく貢献すると同時に、私たちの排出権取引における地位を確固たるものにするでしょう」と述べています。
最新の「貧困−環境パートナーシップ報告書」によると、開発途上国の貧困削減に貢献する環境問題への取り組みには年間600〜900億米ドルが必要です。排出権取引市場には、新規投資をもたらす潜在能力があります。 MDGカーボン・ファシリティは、京都議定書に基づく市場ベースのメカニズムであるクリーン開発メカニズム(CDM)と共同実施(JI)の枠組みのもとで運営され、これにより先進国は、プロジェクトへの出資を通じて開発途上国での温室効果ガス削減に貢献し、自国の削減目標を達成できることになります。
CDMは急速に拡大しつつある、排出権取引の国際市場の中核に位置するものです。しかしながら、CDMは少なくとも短・中期的には、当初期待されたほどの幅広い利益を生み出すのが困難だと予測されています。CDMのプロジェクトの展開は、これまで主にアジアとラテンアメリカに限られており、そもそも汚染された大気や河川に対応するための末端技術の提供に集中していたため、限られた恩恵をもたらすにとどまっていました。
MDG カーボン・ファシリティは、UNDPの専門知識と国際社会におけるネットワーク、そしてFortis社の排出権取引における手腕と経験を利用して、CDMの更なる活用を目指します。同ファシリティは、かつては排出権取引には対応不可能と考えられていた国や地域に対しても、人々が資源と知識を獲得し、将来の環境と開発を管理できるよう支援します。そして、開発途上国が排出権取引のノウハウを習得し、民間投資を誘致し、より長期的に開発の恩恵を受けることができるプロジェクト技術を開発できるようになった段階で、MDGカーボン・ファシリティは、開発途上国と国際的な排出権取引市場との橋渡し役としての役割を果たし、その市場から撤退する予定です。
「気候変動に立ち向かうには、市場原理の活用が不可欠です。MDG カーボン・ファシリティは、温室効果ガスの排出量削減と開発途上国の経済成長という二重の配当の実現を約束する創造的な市場戦略です」とMDGカーボン・ファシリティの立ち上げ資金の大半を提供した、元米国上院議員、ティモシー・ワース国連財団理事長は述べています。
UNDPとFortis社とのパートナーシップは京都議定書で定められた最初の約束期間 (2008-2012)内に、1500万クレジット分の取引に相当するプロジェクトを支援します。 UNDPとFortis社は直ちにMDG カーボン・ファシリティのためのプロジェクト審査を開始する予定です。
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