2008年03月10日
3月8日 国際女性の日によせて-女性と女の子に投資するということ
ケマル・デルビシュ国連開発計画(UNDP)総裁
国際女性の本日、あまりに多くの女性が彼女たちの属する社会によって守られず、表舞台から追いやられ、十分な賃金を支払われないまま過ごしていると言う事実を思い起こします。多くの開発途上国で、女性や女の子は、家族を食べさせるためにやせた田畑での骨が折れる作業や都市の路地での小商いに身を費やしています。彼女たちのほとんどは、自分たちの人生を改善できるような土地、資産、預金や遺産を手に入れることができない状態にあります。
女性の総合的な就業率は増加しているものの、そのうちの6割は労働賃金の支払われない、あるいは権利の保障されない非公式雇用だと報告されています。これらの非公式雇用者は農業経済の屋台骨であるにも関わらず、彼女たちはその貢献度に見合ったみかえりを得られずにいます。2005年の統計によると北アフリカと南および西アジアにおける非農業分野での労働のうち、女性が賃金を得ている割合は22%に過ぎませんでした。2000年の統計では、非公式雇用者のうち女性の占める割合は、サブ・サハラ地域で84%、ラテンアメリカでは58%でした。
私の最近の西アフリカへの訪問は、女性や女の子が水汲みや薪集めのために一日何キロも歩き、自分たちの収入にはつながらない土地を耕し、種を撒き、収穫するなど、まさに先述の統計に示されている現状が、人々の人生にどのような影響を与えるのかを再度、認識するものでした。彼女たちは学校に行く時間が全く、もしくは僅かしか与えられず、生活に必要最低限必要なお金を得ることもできず、どん底の生活から抜け出して利益を生み出すことのできる家内工業に従事することなど望めない状態にあります。
しかしながら、たくさんの女性たちが自主性と適切な支援、そして法の整備を支えに、かつて存在しなかった分野の市場を開拓し、そこで得た利益を家族の教育や健康に投資できるように変えてきているのも事実です。女性と女の子に投資するということは、彼女たちの権利のためだけではなく、人間開発を全ての人々のために進捗させるためにも意義深いことなのです。
貧しい女性農業従事者の生産性と収入向上のために、UNDPが実施する低コストの機械を取り入れたセネガルのSakhoさんの例を紹介します。彼女は脱穀等の作業が機械化されたことによってできた時間をシア・バターの生成と販売に廻すことができるようになり、収入が4倍に増えました。その利益を彼女は子供たちの教育費や被服費にあてることができています。
東ティモールでは技術研修やマイクロ・クレジットの利用、そして革新的な農業技術によってUNDPは女性の労働をビジネスに転換するお手伝いをしています。そうすることによって、同国が見舞われた危機により被害を受けた女性たちが、コミュニティを再建できるように支援を行っています。パラグアイでは、マイクロ・ファイナンスのサービス提供者と協同し、サービスにおける女性の需要を把握し、彼女たちがサービスにアクセスする際に面する障壁について理解を深める手助けをしています。今までに約150の小規模事業開設がこのマイクロ・クレジットによって創業され、そのうちの60%が女性によるものでした。全ての貸出しにおいて返済は滞っておらず、順調に行われているようです、
これらの成功例は、女性の社会的地位向上とジェンダー平等を目指した投資に力を注ぐことが、貧困削減、民主的ガバナンス、紛争予防と復興、そして環境とエネルギーというUNDPの掲げる4つの重点分野の強化につながることを証明しています。UNDPはこの重点分野において、ジェンダー平等が達成されるよう、UNDP本部や各国国事務所に設置するジェンダー専門家を増やし、強化しています。またUNDPは、女性の社会的地位向上に特化したプロジェクトに費やした予算とその成果を計るシステムを強化し、どこで、どのように行われたUNDPのプロジェクトが一番効果的な投資であったかを追跡できるようにしています。そして、UNDP総裁が議長を務めるジェンダー推進運営委員会(GSIC)を設け、公式な責任制度を設置することによって、UNDP幹部がジェンダー平等を達成する責任を果たすべく保証しています。それとともに、組織内でも職務レベルに関わらずジェンダー平等が実現されるように努力しています。
国際女性の日のテーマでもある“女性と女の子に投資すること”とは、女性を蔑視し、社会や経済に全面的に参加して利益を得ることを阻む制度や考え方を変えることなのです。娘が父親の遺産として土地や財産を相続できないという時代遅れな法律を変えること、それは女性が収入を得るための労働と家族との生活を両立できるように、適正な価格と質の保育を提供できるように政策を改善すること、家庭内で清潔な水と近代的なエネルギーを利用可能にすること、そして、女性が公共の意思と政策決定の場に参加できる構造をつくり、社会および経済政策の策定に参加できるように社会的地位を向上させることなのです。
貧困と戦い、ミレニアム開発目標をはじめとする国際社会で合意された開発目標の達成は、女性の潜在能力を認め、極度の貧困の撲滅のためにその能力を発揮できるように支援しなければ実現できないのです。
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