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ニュースルーム −プレスリリース−
2008年06月18日
『アジア太平洋地域版人間開発報告書-政治腐敗と戦い、人々の生活を改善する』 はアジア太平洋地域における政治腐敗撲滅のための重点分野を調査 ―政治腐敗は貧困層に最も打撃を与える 【ジャカルタ、インドネシア2008年6月12日】アジア太平洋地域において、政治腐敗による貧困層の生活の締め付けを緩和するためには警察、保健、教育そして環境部門の整備が最優先事項である、と12日に発表された国連開発計画(UNDP)発行の『アジア太平洋地域版人間開発報告書』は指摘している。 本報告書は、汚職撲滅は概して要人の不正暴露に力が注がれるが、実際には勤務していない架空の教師の給料を着服する公務員、貧しい人々や出産のために来院した女性に現金支払を強要する医師などの小規模の汚職が人々に日々負担を与え、地域のミレニアム開発目標(MDGs)の達成を阻害する問題になっていると指摘している。 「権力と富を持つ汚職人物を法廷に引きずり出すことは、新聞の見出しを飾ることにはなりますが、小規模の汚職の撲滅は、日々の負担を強いられている貧しい人々を救うことになります。小規模の汚職は絶え間なく、多数の人々を苦しめており、貧しい人々に負担をかける割合は非常に高いのです。」とアヌラダ・ラジヴァン地域別人間開発報告書室長は述べる。 本報告書は、汚職の撲滅は以前にも増して、その必要性が高まっていると述べる。特に、水、電力、保健や教育分野において、政府の信頼性を高め、市民の日々の行政に対する満足度を高めることになる。このことを念頭において、本報告書は地域内における政治指導者たちにさまざまな提案を示している。 本報告書では、以下のテーマが取り上げられている。 売買される正義−アジア太平洋地域では、汚職に最も関わりがあるのは政治家、次いで警察そして司法官だとみられている。昨年度、アジア地域に住む市民の5人に1人は警察に対して賄賂を支払っており、また犯罪被害は4件に1件しか報告されていない。アジア太平洋の国々では、被害を報告しなかった者のうち、4分の1から3分の1の人々は警察に対する信頼性の低さを理由に挙げていた。また、アジアにおける人々の3分の2は司法制度においても汚職がはびこっているとみている。 社会サービスの需要と賄賂の関係 −保健などの社会サービスにおける汚職は、予防接種の予算流用を招く。アジア地域内で、清潔な水や衛生設備の不足による下痢で死亡する何百万人もの子どもたちを増加させることになる。 病院が賄賂を請求することは南アジア地域では珍しいことではない。バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタンとスリランカでは、人々が病院にかかるには、ベッドや国から助成を受けている薬を提供してもらうために医療従事者から賄賂を請求されるという。同時に、地域内のいくつかの国では、提供されている薬の3分の1は期限切れのもの、もしくは偽薬であり、貧しい人々は度々、病院が在庫を切らしている包帯や注射器の費用を負担させられるという。また、汚職の度合いが高いほど、予防注射などの保健インプットが低いと報告する研究もある。世界銀行の算出する汚職撲滅指数では、子どもの死亡率減少は、汚職の撲滅によって2ポイント改善するだろうといわれている。 教育分野において、汚職の割合の高さは、学校に通う子どもの数の少なさ、ドロップ・アウトする子どもの数、非識字率の高さ、貧困から抜け出すための道が閉ざされた人々の数は相関している。教育における汚職の極端な例としては、一度も登校せずとも給料が支払われ続ける架空の教師の存在がある。さらに、架空の学校も存在するという。 清潔な水、衛生設備、電力網の拡大は高額で、大規模なインフラへの投資が必要である。しかし、これらの投資の40%が談合入札やほかの汚職によって浪費されている。貧しい人々は、これらの公共設備を手に入れるために、賄賂を支払うしかない。バングラデシュでは都市部の60%の家庭が水道設備を引くために賄賂を支払うか、もしくは何らかの圧力をかける必要があったという。 奪われる自然資源―アジア太平洋地域の多くの国々は、 経済そして人間開発の土台となる広大な熱帯雨林、豊富な鉱物量と肥沃な農地を抱えている。しかし、これらの資源の潜在能力は汚職によって奪われている。自然資源を違法、もしくはそれに近い状態によって取引するために民間企業が役人に金を支払い、企業にとって都合が良いように法を整え、彼らに有利な政策や規則をつくる。それによって生ずる莫大な利益は、汚職の金額が国家予算に相当するほどである。違法伐採は最も貧しいコミュニティに打撃を与え、環境の悪化を招いている。 誠実さを保つ方法―汚職に対抗するために、インドネシアでは保護者を学校における資金のマネジメントに巻き込んで、汚職を最小限にとどめる試みが始められた。保護者代表が学校とともに年間支出計画を確認し、年を通じて支出の報告を受ける仕組みをつくっている。インド、ラジャスタンの農村部では、現地NGOの発案で、教師に対して、毎日の登下校時に日付入りの写真を子どもたちと撮ることを給与満額支払の条件として義務付けたところ、学校で授業が行われる日数が3分の1増加した。 カンボジアのプノンペンの水供給施設では透明性の向上のために、職員の給与を能力制に切り替えたところ、1999年には25%だった市内の水道普及率は2006年には90%に到達し、最も貧しい世帯での普及率は100戸から13、000戸に増加した。 国家レベルでも、汚職に対する正しい法律の制定と施行も成功している。中国では2006年に学校や病院職員によるキックバックや賄賂の受け取りに対して刑罰を科す法律を導入した。そして、前国家食品薬監督管理局長官は85万米ドル以上の賄賂の受け取りで有罪判決が確定している。 行動計画への呼びかけ―本報告書は全ての汚職問題を解決する万能の答えはない、としたうえで、いくつかの方法を示している。 ・ 医師や教師、公務員が賄賂に頼らなくとも生活できるように賃金を値上げする。公務員職にも能力制を導入し、 現地政府による監視メカニズムを強化し、官僚機構改革を行う。 ・ 商業倫理が国際基準に達するよう働きかける。 ・ 情報公開法を制定する。 ・ 情報テクノロジーや電子政府によって行政の透明性を高める。 ・ 市民監査を行えるように、現地政府に契約に関する情報の公開を義務付け、汚職撲滅のための市民のアクション を支援する。 2006年以来、アジア太平洋地域版人間開発報告書は定期刊行物になっている。報告書は国および地域レベルにおける重要な開発問題を継続的に分析し、地域内の対話を推進し、議論を提供することによって貧困対策を支援している。 「アジア太平洋地域版人間開発報告書-政治腐敗と戦い、人々の生活を改善する」レポートはこちら この件についてお問い合わせ: UNDP東京事務所広報官: 西郡俊哉、電話:03-5467-4751, e-mail: toshiya.nishigori@undp.org UNDPニューヨーク本部: Cassandra Waldon; 電話+1 212 906 6499,email: cassandra.waldon@undp.org |