2010年11月05日
人間開発報告書2010で貧困、ジェンダー、不平等の影響を測る革新的な新指標を発表― 20周年記念版人間開発報告書は先駆的な新指標を特徴とする―
【2010年11月4日】 国連開発計画(UNDP)は本日、2010年版の人間開発報告書を発表した。 本報告書では、人間開発報告書が長年使ってきた人間開発指数(HDI)を補完する、3つの革新的な新しい計測指数として、不平等調整済み指数、ジェンダー不平等指数、多次元貧困指数を導入している。
本報告書の主筆であるジェニ・クルーグマンは「これらの新しい計測指数は、国家の問題や成功を特定することを可能にする重要な方法論的前進であり、人々の生活改善させる政策や発想を育むことに役立つでしょう」と話す。
『国家の真の豊かさ - 人間開発への道筋』をテーマにした人間開発報告書2010は、不平等の度合いを考慮にいれた上での人間開発の指標として、新たに不平等調整済み人間開発指数 (IHDI)を導入した。完全な平等の状況では、HDIとIHDIの値は一致する。保健、教育、所得の各側面に不平等がある場合、平均的な個人のHDIは国全体の集計した数値よりも低くなるため、IHDIの値が小さくなるほど、またIHDIとHDIの差が大きいほど、不平等が大きいこととなる。
●不平等による平均的なHDIの下落率は22%である。不平等度合いを反映させた結果、2010年の世界全体のHDIは0.62から0.49に下落し、HDIカテゴリーでは、HDI高位国から中位国に転落した計算になる。下落幅は、6%(チェコ共和国)から45%(モザンビーク)であった。HDIの下落幅は、8割の国が10%以上、25%以上下落した国も4割あった。
●人間開発水準が低い国は、非常に不平等な状態に置かれている傾向にあり、新しい不平等調整済み人間開発指数を照らし合わせると、HDIの値が大きく落ち込む。ナミビアでは44%、中央アフリカ共和国では42%、ハイチでは41%、HDIの値が下落する。
ジェニ・クルーグマンは「不平等調整済み人間開発指数(IHDI)は、多くの国で総じて平均的な開発成果が上がっているにもかかわらず、相当の人が取り残されていることを示しています」と話した。
また、人間開発報告書2010はジェンダー不平等指数 (GII) も発表した。この指数はHDIとIHDIのように同じ枠組みでつくられたもので、男女間における人間開発の達成度の格差を浮き彫りにしている。指標として妊産婦死亡率や女性の議会における議席数などを用いて、GII は以下の事実を明らかにしている。
●ジェンダー不平等の度合いは、国家間で非常に大きな差がある。ジェンダー不平等がもたらすHDIの値の下落幅は、17%のオランダから85%のイエメンまで大きな開きがある。
●GII によると、ジェンダーが最も平等でない10カ国は、降順にカメルーン、コートジボワール、リベリア、中央アフリカ共和国、パプアニューギニア、アフガニスタン、マリ、ニジェール、コンゴ民主共和国、イエメンであり、これらの国々のGII平均値は0.79である。一方で、最もジェンダーのバランスがとれている社会は、オランダ、デンマーク、スウェーデンである。
●人間開発の水準の成果が不平等な国々は、男女間の不平等も大きい。またジェンダーの不平等が大きい国々は、人間開発の成果の不平等も大きい。ジェンダー平等と人間開発の平等の両面で成果が乏しい国々は、中央アフリカ共和国、ハイチ、モザンビークである。
●カタールはHDI高位国のなかでも最もジェンダー平等ではない。ブルンジはHDI低位国の中で、中国はHDI中位国のなかで最もジェンダー平等に近い国である。
ジェニ・クルーグマンは「平等な教育の機会、医療的ケア、法律上の権利、政治への参加機会を女性や女児に提供することは社会的に正しいだけでなく、すべての人の発展にとって最も効果的な投資です。ジェンダー不平等指数は社会に存在する男女格差の程度や影響を客観的に測ることで、人間開発の進歩を促進するように意図されています」と話す。
今年の報告書は、所得基準の貧困測定を補う指数として多次元貧困指数 (MPI) も導入した。MPI は、HDIと同じく健康、教育、生活水準の3つの側面で貧困を測り、家計単位で貧困状態にある人の数と貧困の度合いを明らかにしている。MPIは10 の指標に基づいて算出され、3つ以上の指標が満たされていない世帯は貧困であると判断される。MPIは、地域、民族、その他のグループおよび異なる側面ごとに数値を算出できるだけでなく、国レベルでも活用もできる。MPIにより明らかになった主なことは下記の通りである。
●MPIの対象となった104カ国に暮らす人の3分の1にあたる約17.5億人が、多次元貧困状態にある。この数は同じ国々で、1日1.25ドル未満で暮らすと推計されている14.4億人を上回っている。
●サハラ砂漠以南アフリカは、世界で最も多次元貧困率が高い地域である。その割合は、最も低い南アフリカで3%、最も高いニジェールで93%である。ただし、MPIによると、世界の貧しい人々の半数は南アジアに暮らしている。多次元貧困状態にある人は、サハラ以南アフリカが4億5800万人であるのに対し、南アジア地域は8億4400万人となっている。
●MPIは、人間開発報告書2010のために、オックスフォード大学のthe Oxford Poverty and Human Development Initiative がUNDPの支援を受けて開発した。これは、人間開発報告書で従来利用されてきた人間貧困指数に代わる指数である。
不平等調整済み人間開発指数、 ジェンダー不平等指数、多次元貧困指数、その他人間開発報告書2010に関する更なる情報は、ウェブサイトをご覧ください。www.hdr.undp.org
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本件に関するお問い合わせは
国連開発計画(UNDP)東京事務所 西郡
電話:03-5467-4751
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