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ヘレン・クラーク国連開発計画(UNDP)総裁訪日報告(2009年11月23日-25日)

 ヘレン・クラーク国連開発計画(UNDP)総裁は、2009年11月23日より25日まで、4月の総裁就任後初めて訪日し、日本とUNDPのより充実したパートナーシップのために日本政府、公的機関や市民社会、民間セクターなどの様々なUNDPのステークホルダーと会談しました。本レポートではその訪日の足どりの一部をお届けします。

政府・国会・公的機関

鳩山由紀夫内閣総理大臣、岡田克也外務大臣、藤井裕久財務大臣への表敬訪問

 ヘレン・クラークUNDP総裁は、11月24日(火)、鳩山由紀夫内閣総理大臣を表敬訪問し、岡田克也外務大臣、藤井裕久財務大臣等の政府要人と意見交換を行いました。
 鳩山総理大臣からは、UNDPを重要なパートナーとして、特にアフガニスタン復興支援等の面で緊密に協力していきたいとの発言があり、クラーク総裁よりも、アフガニスタン支援に加えて、日本がリーダーシップを発揮すべき分野として、気候変動、アフリカ支援とミレニアム開発目標(MDGs)の達成といった分野を挙げ、これら3分野において日本との協力を推進していきたいと応じました。

岡田克也外務大臣(左)と
ヘレン・クラークUNDP総裁(右)
©外務省

 予定を大幅に超えた岡田外務大臣との意見交換では、クラーク総裁より、上記UNDPと日本の協力・連携強化に加え、日本からのUNDPへの拠出金(コア予算)が減少していることに言及し、UNDPと日本が世界的規模で協力を進めるためにも日本からの拠出金は重要であり、国内の厳しい経済・財政事情はあるものの、拠出金の減少傾向の反転を実現して欲しいと強調しました。


藤井裕久財務大臣(左)と
ヘレン・クラークUNDP総裁(右)
©UNDP

 クラーク総裁は、藤井財務大臣との意見交換のなかでもUNDPへの拠出金の問題を取り上げました。このほか、クラーク総裁は福山哲郎外務副大臣や西村智奈美外務大臣政務官とも別途懇談し、UNDPと日本のパートナーシップの強化について、率直な意見交換を行いました。



ヘレン・クラークUNDP総裁(左)と
緒方貞子JICA理事長(右)
©JICA

JICA緒方貞子理事長との意見交換
 11月24日(火)、ヘレン・クラークUNDP総裁は緒方貞子JICA理事長を訪問しました。意見交換では、MDGs達成に向けた進捗に遅れが生じているアフリカにおいては、各国が一つでも多くのゴールを達成できるように、それぞれの国のニーズに合わせた能力開発や政策的支援を行うことが重要であると確認されました。そして、日本とUNDPがリードしているアフリカ開発会議(TICAD IV)のフォローアップにおいて、JICAが進めているアフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development(CARD)を通じた農業・農村支援や気候変動対策の分野で連携を強化することで合意しました。
 最後に、クラーク総裁と緒方理事長は、UNDP-JICA連携強化のための覚書(MoU)に署名し、UNDPとJICAは世界同時不況や気候変動といった危機的状況の下、2015年に迫っているMDGs達成期限に向けて重要な一歩を踏み出しました。


演説を行うヘレン・クラーク総裁
©UNDP

参議院政府開発援助等に関する特別委員会での演説
 ヘレン・クラークUNDP総裁は11月25日(水)、参議院政府開発援助等に関する特別委員会に召致され、演説を行うとともに、岩永浩美委員長をはじめとする29名の委員との間で意見交換を行う機会を得ました。クラーク総裁は演説のなかで、世界同時不況、食糧・燃料価格および気候変動により最も深刻な打撃を被るのはアフリカをはじめとする開発途上国の最貧層であると訴え、危機の克服および再発予防、そしてミレニアム開発目標(MDGs)達成支援にUNDPを含む国連が果たしてきた役割を紹介しました。また、主要ドナーたる日本の貢献に対する謝意とともに、アフリカ開発や平和構築分野における更なる連携強化への期待を表明しました。
クラーク総裁の演説原稿はこちら(PDF)


市民社会、民間セクター

飯島彰己三井物産株式会社社長(左)と
ヘレン・クラーク総裁(右)
©UNDP

モザンビークの太陽光発電事業における三井物産株式会社との会談
 ヘレン・クラークUNDP総裁は11月24日(火)、の飯島彰己三井物産株式会社社長、田中誠一専務執行役員と会談しました。会談では、モザンビークにおける太陽光発電事業*を推進することで合意したほか、貧困層を対象とした包括的なビジネス戦略について意見交換が行われました。

 (*注)モザンビークでUNDPが実施しているミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに対して、三井物産が太陽光発電システムを提供する事業。農業増産のための灌漑用水整備などに活用することによって、所得向上、雇用創出による貧困削減を図るとともに、持続可能なビジネスモデルの確立に向けた取り組みを行う予定です。


紺野美沙子UNDP親善大使(左)
ヘレン・クラークUNDP総裁(中央)
菊川剛オリンパス株式会社
代表取締役社長(右)
©OLYMPUS CORPORATION

「世界を写そう:地球のことを考える」写真コンテストの受賞作品展の開会式に出席
(オリンパスおよびAFP財団とのパートナーシップ)
 ヘレン・クラークUNDP総裁は11月25日(水)、UNDP、オリンパス株式会社ならびにAFP財団によって開催された気候変動に取り組むアフリカの人々をテーマとした写真コンテスト「世界を写そう:地球のことを考える(Picture This:Caring for the Earth)」の受賞作品展の開会式・記者発表会に菊川剛オリンパス株式会社代表取締役社長、紺野美沙子UNDP親善大使とともに、出席しました。開会スピーチでクラーク総裁は、「気候変動の影響を最も受けるアフリカをはじめとする開発途上国の人々は、同時に自然環境とその保護について最もよく知る人々です。私たちは、このコンテストの受賞作品写真に登場するような人々から学び、彼らの声を広く世界に伝えなければなりません。」と述べ、共催者であるオリンパス株式会社とAFP財団に対する感謝を示しました。本コンテストは2009年初夏から開始され、東京写真展は世界で最初の入賞作品展会として12月1日まで新宿モノリスビルにて開催されました。さらに入賞作品は、東京、ヨハネスブルグに続き、ニューヨークでも展示される予定です。



片山信彦ワールド・ビジョン・ジャパン
事務局長(左)
ヘレン・クラークUNDP総裁(中央左)
目黒依子上智大学名誉教授(中央右)
ブルース・ジェンクスUNDP
パートナーシップ局長(中央右)
山田太雲オックスファム・ジャパン
アドボカシー・マネージャー(右)
©UNDP

市民社会代表者との懇談
 ヘレン・クラークUNDP総裁は11月25日(水)、日本の国際協力に関する活動を推進している市民社会団体と懇談しました。市民社会組織(CSO)からは、片山信彦ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長、山田太雲オックスファム・ジャパン アドボカシー・マネージャー、目黒依子上智大学名誉教授・女性と政治センター理事が出席し、新政権における援助政策策定に向けた動向とそのプロセスにCSOが積極的に参画している現状についてクラーク総裁に説明がありました。また、UNDPと日本とのパートナーシップにおいてジェンダー主流化の持つ重要性が指摘されました。クラーク総裁とジェンクス パートナーシップ局長からは、日本のCSOに対し、人間開発報告書(HDR)創刊20周年に当たる2010年を機に、UNDPが世界中のCSOとともに「人間開発」の理念を再検証するために立ち上げたイニシアティブ「Platform HD 2010」への積極的な参加要請がありました。さらに、懇談では、日本国内でMDGsへの理解と支援を拡大するために、UNDPとCSOが協力してアドボカシー活動を行うことで合意しました。