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アジア・太平洋地域の気候変動への取り組みは、グローバルにインパクトを与える

2012年5月10日

発刊されたアジア人間開発報告書

発刊されたアジア人間開発報告書


【2012年5月10日、ジャカルタ】
「アジア太平洋地域の国々は岐路に立っており、これから、繁栄と排出のバランスを取る必要がある。これが成功するか、失敗するかは、世界に大きく跳ね返る」。国連開発計画(UNDP)が本日発表したアジア太平洋地域人間開発報告書『一つの地球:気候変動の中での人間開発を持続するために(One Planet to Share: Sustaining Human Progress in a Changing Climate)』が明らかにしました。

報告書は「アジア太平洋地域では、経済成長を続け、何百万人もが貧困状態から抜け出す必要があるが、同時に気候変動に対応しなくてはならない。成長を優先させ、環境問題を後回しにするという選択肢はもはやない」と指摘しました。この報告書は、6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)を前に人々の懸念に脚光を浴びせ、気候変動に関する議論を再活性化する狙いがあります。

国連事務次長補兼UNDPアジア太平洋局長のアジャイ・チーバ氏は「アジア太平洋地域で低炭素成長への道のりに関する政策決定が、地球の将来を左右します。目標は明確で、貧困を削減して富を増やす一方、二酸化炭素の排出量を減らすことです」と話しました。

世界人口の半分以上が暮らし、世界の大都市が存在するこのアジア太平洋地域は、世界に大きな影響を及ぼします。報告書は「躍動するアジア太平洋地域の国々はもはや、炭素を大量に発生させ、消費するような古いやり方に固執していない。アジア太平洋地域は、規制だけに頼るのではなく、既存とは異なる方法で開発を進める機会もある」と指摘しています。

報告書は気候変動に直面するアジア太平洋地域の国々について、「ものの製造方法、農作物や家畜の育て方、エネルギーの発電方法を変えることが必要になる」と論じ、「環境保護のためだけでなく、貧しい人々に雇用や収入機会を提供する、環境に優しく、抵抗力のある、排出量が少ない選択肢に移行していく」必要性を示唆しています。

また、報告書は「経済の急成長を遂げているアジア太平洋地域の国々は、今こそ、行動をするときだ」と促しています。良い兆しも出ています。例えば、中国はGDP単位あたりの二酸化炭素排出量を2020年までに2005年の数値比で40〜45%削減、インドも2020年までに2005年の数値比で20〜25%削減すると公約しています。インドネシアは、2020年までに26%削減することを公約しています。

製造方法を変えるとき

アジア太平洋地域の経済成長は、もともとは化石燃料を使ったエネルギーに依存していました。この地域の温室効果ガスの大半は、エネルギーの発電、製造業、農業で排出されています。この地域は、他の地域の消費者需要に応えて、ものを製造する大規模な工場地帯として躍動しています。成長するアジア太平洋地域の国々は、工業用途で直接使用する目的で、世界の石炭の80%以上を燃やしています。この地域の一次エネルギーの約85%は、石炭、天然ガス、石油の化石燃料で賄われています。

農作物の栽培、家畜の飼育など農業生産、土地改良、森林伐採に由来する世界の二酸化炭素排出の37%はアジア地域が占めています。温室効果ガスは主に、家畜飼育やコメの栽培の際に使う亜酸化窒素、化学肥料、メタンと、土壌が耕されたときに発生する二酸化炭素に由来します。

アジア太平洋地域の国々は、貧困や排出量管理などの課題に取り組む一方で、低炭素型の製造に移行しつつあります。

公平でバランスのとれた消費

アジア太平洋地域の消費者市場は巨大ですが、公平なものではありません。ほんのわずかしか消費ができない人々もいます。17か国では、人口の10%以上が十分な食料が手に入らない生活をしています。この地域の約9億人が極度の貧困状態(1日1.25ドル以下)にあります。

また、この地域では携帯電話の契約件数が25億件を超える傍ら、地域人口の半分、つまり約19億人が水洗トイレなどの基本的なサービスを受けられないという格差が生じています。

報告書は「地域の新たな消費者層の購買能力向上と併行して、極度の貧困に苦しむ人々の喫緊のニーズに応えることは、食料、水、エネルギー、住居、消費財の需要向上につながるだろう」と指摘しています。これらは、天然資源により大きな負荷をかけるため、消費パターンのバランスを取る必要がでてきます。特に富裕層と拡大しつつある中産階級層に対し、エネルギーや天然資源の消費をより抑えたバランスのとれた消費を求める必要があります。

報告書は「気候変動枠組条約(UNFCCC)下での『共通だが差異ある責任』の重要な原則は、先進国と開発途上国の地球環境問題に与えた影響の歴史的な違いと、両者の効果的な対応能力の違いを認識することである」としています。

環境に優しい都市計画

世界の大都市(人口1千万人以上)トップ20位の半数はアジアに位置しています。アジアには世界で最も急速に成長している都市が複数存在しており、それらの都市は気候変動の原因と結果についても対応しなければなりません。都市部は、主にエネルギー消費と交通に由来する温室効果ガスを大量に排出しています。地球全体で考えると、都市部の面積はわずか2%にしか過ぎませんが、その都市部が温室効果ガスの3分の2以上を排出しています。

同時に、都市部は、人とインフラが川や海岸など低海抜地帯沿いに密集しており、気候変動の影響を受けやすい地域です。その中でも最も影響を受けやすいのは都市貧困層で、彼らは気候変動や環境による災害が起きる危険をはらんだ辺境地域に住んでいます。

しかし、報告書は「都市部は経済、政治、活力、革新技術の中心地である。それ故、炭素効率の高い方法で発展し、地球温暖化に適応するために、新しい賢明な戦略を見つけることもできる」とし、都市部の行政機構に対して環境に優しいエネルギーを使い、より効率的な交通システムを構築し、より環境に配慮した建物とより良い廃棄物処理管理をするように促しています。

地方の抵抗力向上

アジア太平洋地域では、地方で暮らす約7億人が極度の貧困状態で、彼らは山間部の鉄砲水から河川デルタ地域や太平洋の島国での海面上昇まで、気候変動の様々な影響を受けています。

地方コミュニティが受ける資金やサービス支援は、比較的わずかです。例えば、天候に左右されずに使用できる道路が無ければ商品の売買は難しく、また往々にして彼らには気候変動に関してしっかりした正確な知識を持っていません。報告書は、情報や低コスト技術へ更に投資するように論じています。例えば、携帯電話に最新の情報が更新できるようになれば、刻々と変化する環境の中でも、農業従事者が天気予報、災害警報、農産品価格など、自分たちの日常に関する情報を受け取ることができます。

報告書はまた、非農業部門の業種に大部分が移行した男性に比べて、未だ地方で農業に依存している女性たちのニーズと懸念に対し特に配慮するよう呼びかけています。これは例えば、女性は農業拡大事業に加わる機会が男性に比べて少ないためです。

アジア太平洋地域で、気候変動に耐えうる低炭素成長するための推奨
・グリーン技術への移行を推奨する
・工業排出物を削減する
・グリーン農業を推奨する
・よりクリーンなエネルギー生産を支援する
・都市部と地方の貧困層の生活見通しを向上する
・資金源を拡大する
・一般市民の関心向上に資する気候変動に関する正確な知識共有を強化する
・国境を越えた協力体制を築く