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United Nations Development Programme

国連開発計画(UNDP)東京事務所

TICADⅣにむけて

2008年5月13日

サッカー元日本代表選手の中田英寿さん、アフリカでUNDPのプロジェクトを視察 ~ガーナ編~

                                arrive-top-ghana.jpg©nakata.net

                                                            

   サッカー元日本代表MFの中田英寿さんは、2006年のドイツワールドカップを最後に現役引退後、世界の開発途上国の現状を自分の目で確かめるために、数多くの途上国を訪れ、現地の人々との交流を重ねてきました。今年2008年は、5月末に横浜でTICAD IVが、そして7月には洞爺湖G8サミットが開催される特別な年です。そこで、中田さんは今年1月から2月にかけてアフリカ諸国を歴訪し、ガーナとルワンダでは、UNDPのプロジェクトを訪れ、地元の人々やプロジェクト担当者の案内により「アフリカ開発の今」を見て回りました。

                                                            

 ガーナ編: 経済成長の恩恵をすべての人に

                                                            

   2008年1月末、中田さんは、北部の都市タマレ近郊でUNDPが支援する2つのプロジェクトである「持続可能な生計手段支援プロジェクト」と、「シアバター産業支援を通じた女性のエンパワーメントと貧困削減プロジェクト」を訪れました。
   ガーナは2000年以降、目覚ましい経済成長を遂げました。2000年には1,964ドルだった一人当たり国内総生産(PPP US$)が、2005年には2,480ドルまで増加しています。しかし、経済成長の恩恵は平等に行き渡らず、国内の経済格差の急速な拡大が問題になっています。格差の拡大は、2008年版ガーナ国別人間開発報告書が指摘するように「社会的疎外」(社会のなかで特定の人々の権利が剥奪され、孤立した状態)を生み出しています。長期間にわたる失業や不平等な小作制度に加え、インフラの発達度や気候風土の違いから生じる地域間格差が、貧困と社会的疎外に拍車をかけています。

                                                            

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     今回中田さんが訪れた北部地域は、降雨量が少なく土壌がやせています。そのため、農業からの収入は不安定で、地域住民は厳しい生活環境に置かれています。これは、湿潤な気候に恵まれていて、換金作物(市場で販売するための作物)の栽培が盛んな南部とは対照的です。UNDPは、北部地域も経済発展の恩恵を受けることができるように、人材、天然資源、伝統技術など、その地域社会に元来備わっている「良さ」の発掘とその活用を目的としたプロジェクトを行っています。

                                                            

持続可能な生計手段支援プロジェクト:地域社会の「底力」を発掘する
 

                                                            

    中田さんはまず、シア地区の地域社会主導型のプロジェクトを訪れました。地元住民は、伝統ダンスで中田さんを大歓迎しました。 このプロジェクトは、UNDPとガーナのNGOの支援を受けながら、地元住民が運営しているものです。シア地区の優先課題は「教育」です。住民が中心となって行ったプロジェクトの立案会議で、「子どもたちはコミュニティの未来を支える大切な財産である。しかし、学校の中途退学率高く、進学試験での結果が芳しくない。これでは、我々は質の高い教育を子どもたちに提供できていないのではないか?」という議論が繰り広げられました。そこで、シア地区の住民は「教育の質の向上」を重点課題とし、自ら戦略を練ったのです。そして、PTAの活性化、付近の天然資源(砂、木材、レンガなど)や住民たちの労働力を駆使しての学校校舎の建設などに取り組み、その結果、親の地域住民の「教育」に対する意識や、子どもたちの就学率が向上してきました。同時に、シアバターの製造や乾期の農作業の促進などを通じて、持続的な収入源の確保と生活向上に向けた取り組みを住民たちが中心となって行うようになりました。中田さんは、「子どもたちの制服代は誰が払うのですか?このような地域主導型の教育への取り組みにおけるUNDPの役割は何ですか?」など、地元住民やUNDP職員に熱心に質問しました。

                                                            

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©nakata.net               ©UNDP                ©nakata.net

                                                            

中田さんは帰り際に、地域の子どもたちにサッカーボールを寄贈しました。「サッカー技術に自信がある子はいますか?」との声に促され、リフティングを披露する元気な子どもたちも現れ、中田さんも目を細めてその様子を見守りました。

                                                            

シアバター産業支援を通じた現地女性のエンパワーメントと貧困削減プロジェクト

                                                            

                                             shea-ladies.JPG©UNDP

                                                            

   次に、中田さんはUNDP/日本WID基金が支援するシアバター産業支援プロジェクトを視察しました。シアバターとは、赤道直下の西アフリカと中央アフリカ諸国に自生するシアの木の実から採れる天然油脂です。やわらかく、肌の潤いを保つので、保湿クリームや日焼け止めなど、化粧品の原料として使われています。北部地域では、シアバターが女性たちの貴重な収入源です。その伝統的特産品の生産を産業に発展させ、女性たちが持続的に収入を得られるような仕組みをつくろう、というのがプロジェクトの趣旨です。 国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、(株)生活の木などのパートナーが支援に加わり、日本の技術をいかして生産技術の向上や、国内・国際市場の開拓に取り組んできました。中田さんは、見本のシアバターの品質の高さを確かめると、「ガーナ国内のホテルにシアバターの石鹸を置くなどして、外国人観光客やビジネス客にも積極的にアピールしては?」とさらなる市場開拓に向けた具体策を提案しました。また、「伝統的な用途を想定した製品作りだけでは需要が限られるので、現代生活のニーズにあわせた商品開発をしていけば、さらに市場を開拓できるのではないでしょうか?」と指摘しました。
   首都のアクラに戻った中田さんは、ダオーダ・トウレ国連常駐調整官兼UNDP常駐代表を訪問し、視察の報告をしました。そのなかで、「(貧困削減やガバナンスを中心とする)UNDPの活動には複雑なものが多く、一般の人たちに伝えるのがとても難しいと思います。だからこそ、クリエイティブなPR手法を活用するなどして、難しいことをわかりやすく伝える広報を実現していくことが重要なのではないでしょうか?」と提言しました。トウレ常駐代表は、「UNDPの仕事は、社会の発展をサポートすることです。私たちは皆、社会に属しています。ですから、中田さんのおっしゃる通り、私たちの取り組みをわかりやすい言葉で効果的に発信していけば、あらゆる人々に私たちのメッセージを理解してもらうことができるでしょうね。」と述べました。視察と時を同じくして、ガーナではサッカーの祭典、アフリカズ・カップが開催されていました。中田さんは、この祭典のために建設されたスタジアムについて「勉強をがんばっている児童が優先的にサッカーの練習をすることができるようにスタジアムを開放するなど、『教育』に貢献できるような形でスタジアムを有効活用してはどうでしょうか?」と提案するなど、トウレ常駐代表と和やかに歓談しました。

                                                            

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