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中東・アフリカ編

【中東・アフリカ編の事例】
1.ブルキナファソ:クリーン開発メカニズム(CDM)能力開発
2.イラク:北部地域紛争被害者支援
3.スーダン:選挙及び民主化プロセス支援
4.ガーナ:シアバター・プロジェクト
5.ソマリア:ガヘイア学校修復プロジェクト
6.アフリカ気候変動適応プログラム(AAP)
7.エチオピア:ティグライ、アファル、ソマリ地域における地雷対策への貢献
8.エジプト:アフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター
9.ブルンジ:選挙技術支援
10.ウガンダ:ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトにおける学校給食
11.アンゴラ:地雷除去機関能力向上計画
12.モザンビーク:対人地雷禁止条約第5条の期限内達成に向けて
13.ナミビアとニジェール:地域に根差した気候変動適応プロジェクト

1.ブルキナファソ:クリーン開発メカニズム(CDM)能力開発

西アフリカは、気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書の中で最も脆弱性の高い地域の1つとされています。特に、農業、牧畜、森林は、気候変動の影響を最も受けやすい分野であり、同時にこの地域の大部分の人口を養う主要な経済基盤です。2009年のUNDP人間開発報告書において人間開発指数が177か国のうち173番目に位置する後発開発途上国(LDC)のブルキナファソでは、人口の9割が農業・牧畜に従事しており、気候変動の影響によるさらなる貧困悪化が懸念されます。

「ブルキナファソにおけるクリーン開発メカニズム能力強化」のプロジェクトは、日本・UNDPパートナーシップ基金により、気候変動緩和に必要な体制強化を目的に開始されました。このプロジェクトで、国立水衛生局(ONEA)と連携してクリーン開発メカニズム(CDM)実施しているONEA-CDMがあります。ONEA-CDMでは汚水から排出されるメタン(強い温室効果を持つ)を成分に含むバイオガスを採取しています。このバイオガスは採取場近くにあるBRAKINAというビール会社のボイラーで化石燃料の代わりに使用されます。CDMのガイドラインはバイオガス採取と化石燃料代替を温室効果ガスの排出削減として認可しているので、炭素クレジットやバイオガスをBRAKINAに売却することにより、ONEAに利益をもたらすことも期待されています。

このONEA-CDM計画は国内初のCDMプロジェクトとなります。このプロジェクトは西アフリカ地域、さらに後発開発途上国のCDM参加実現に向けた取り組みの模範事例であり、自然エネルギーのさらなる開拓と新しい技術の可能性を示唆しています。


2.イラク:北部地域紛争被害者支援

© UNDP Iraq

1988年サダム・フセイン政権はイランとの国境付近にあるクルド人の町、ハラブジャにおいて毒ガス攻撃を行い、5000人が死亡、1万人が負傷しました。20年以上経過した後も、毒ガスによる後遺症が人々の健康を脅かしています。日本政府の資金拠出により、ハラブジャに毒ガス後遺症の専門的治療を行う母子病院の建設が進んでいます。UNDPは現地スレイマニアに事務所を持つ日本のNGO、ピース・ウインズ・ジャパン(PWJ)とチームを組んで、2010年末までに母子病院・医療従事者用宿泊施設・医療研修施設を開設することを目指しています。PWJは建設計画・施工管理と医療専門家を対象とした実地技能研修を担当しています。本プロジェクトが立ち上げられた後、保健省は同地区でさらに二つの専門治療施設の建設を開始しました。ハラブジャは医療の中心地として生まれ変わり、地域一帯の全住民に包括的なヘルス・ケアを提供する役割を担うことが期待されています。本事業では、母子病院建設に加え、WHO(世界保健機関)と連携しクルド地方にて地雷の被害者支援を実施しているNGOも支援しています。15歳で片足を失い、現在は五児の母であるズーリアさんはエルビルのソーラン地区にあるダイアナ義肢センター(DPLC)で洋服仕立ての職業訓練プログラムを受け、「貧しかった私たちにとって、洋服仕立ての仕事は家族を養うために不可欠な収入源になっています。DPLCの支援のおかげで家族に笑顔が戻りました」と語っています。


3.スーダン:選挙及び民主化プロセス支援

© UNDP Sudan
日本政府はスーダンの「選挙及び民主化プロセス支援プロジェクト」の選挙支援バスケット・ファンドに対する主要ドナーであり、このプロジェクトにおけるUNDPの支援活動に対して10百万米ドル以上の資金提供を行ってきました。

UNDPは日本政府から拠出された活動資金を、スーダン国家選挙委員会(NEC)への技術支援と選挙の物資調達に活用しました。2010年4月の国政選挙において、UNDPの活動は、市民・投票者教育、市民社会・メディア・司法・選挙監視員への支援など幅広い分野にわたる中で、特に、投票箱・投票用紙など物資の調達と女性による選挙・投票への参加の促進において重要な役割を果たしました。実際に、北部のいくつかの州では、投票者登録と市民教育において女性の参加数が男性の数を上回っていました。南部でも、南部スーダン人民解放運動(SPLM)の副議長は、「投票所に並ぶ人々の7割以上が女性でした」と述べていました。

今回の国政選挙は、2005年1月にスーダン政府と南部スーダン人民解放運動の間に署名された「スーダン包括和平合意」(CPA)に基づき、スーダンに平和社会の礎を築く上で重要な節目となりました。初めて投票に参加したサイドさんは「開票が平和的に終わって、私たちが平和と安定と共に生活できるように国民が結果を受け入れることを願います」と語っています。UNDPは選挙実施後も円滑な民主化移行を達成するため、2010年12月まで支援プロジェクトを続けることになっています。


4.ガーナ:シアバター・プロジェクト

© UNDP Ghana
日本政府とUNDPの連携支援により、サグナリグとワレワレの両地域で生活する女性がシアバター産業を立ち上げ、生産量を伸ばすと同時にシアバター石鹸を開発するという付加価値を生み出しました。両者による働きかけをきっかけとして、ガーナのシアバター産業は持続可能なビジネスとして大きな成功を収めたと言えるでしょう。

2008年5月、ガーナの農村出身の女性たちは、横浜で開催された第四回アフリカ開発会議とアフリカンフェアで、自作のシアバターとシアバター石鹸を展示しました。彼女たちにとって、外国のフェアに出品・参加するというのは夢のような機会でした。また、シアバター製品のオーガニック認証を得る契約を「生活の木」社と結び、ビジネスを拡大することに成功しました。UNDPによる「持続可能な生活」プログラムを通して、シアバター生産を習得する研修プログラムがガーナ北部を中心に広く導入されており、シアバター産業はガーナにおける貧困削減と女性の地位向上に大きく貢献できる産業になりつつあります。


5.ソマリア:ガヘイア学校修復プロジェクト

© UNDP Somalia
UNDPは日本政府の資金提供を受けて、国内避難民・女性・無職ないし低賃金雇用の若者など社会的弱者のための雇用創出を目的とする「早期復興のための雇用創出プロジェクト」を実施しています。この一部として、実地訓練により若者の技術習得を支援する「ガヘイア学校修復プロジェクト」が、現地NGOのHINNAの協力を得て実施されています。

「ガヘイア学校修復プロジェクト」に参加した非熟練労働者、24歳のモハメドさんは、貧しい家庭に生まれ、人生の希望を失っていました。しかしプロジェクトに熱心に参加し、指導員の言葉に忠実に従うことで、短期間のうちに基礎的な石工技術を全て習得しました。モハメドさんは「かつては自尊心が低く、良い教育を受けた仲間を見て羨ましく思っていましたが、このプロジェクトのおかげで石工技術を習得でき、今後の人生に自信を持てるようになりました」と語っています。


6.アフリカ気候変動適応プログラム(AAP)

© UNDP BDP
アフリカ気候変動適応支援プログラム(AAP)はアフリカの20か国において、各国が適応・災害リスク削減プログラムを構想、実施する上で必要となる能力を長期的に開発していく為のサポートを提供するために創設されました。AAPは従来の適応プログラムとは異なり、各国が適応の為に情報をより有効に使用し、適切な活動を決定・実行できる環境作りを目的としており、戦略的なプログラムと位置付けられています。AAPは2008年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議で設置された「アフリカの気候変動対策に関するパートナーシップ構築のための日・UNDP共同枠組」のもとに創設され、日本政府より92百万米ドルの資金拠出を得ています。セネガルに地域間技術支援部を設置し、国同士の知識共有や協力を促進するメカニズムを創設しています。また、本事業はUNICEF, WFP, UNIDO等と連携し、各国のJICA事務所をはじめとする他ドナーとの協調も重視しています。


7.エチオピア:ティグライ、アファル、ソマリ地域における地雷対策への貢献

© UNDP Ethiopia
エチオピアのティグライ、アファル、ソマリ地域の地雷や不発弾は、人々の安全を脅かしているだけでなく、食糧供給や開発を妨げる大きな要因になっています。UNDPはこれらの3地域でエチオピア地雷対策室(EMAO)の地雷除去活動を支援するプロジェクトを実施しています。具体的には、UNDPは戦略的計画の策定、プロジェクトの実施監督、能力強化、資金調達を通じてEMAOの活動を支援しています。

EMAOの年間目標は3地域で500万u以上の土地の地雷除去を行うこと、5万人の大人と子どもにジェンダーと文化に配慮した地雷リスク回避教育を提供することです。日本政府から200万ドルの資金協力を受けて、EMAOは2010年上半期に年間目標以上の成果を収めることに成功しました。2010年6月までに290万uを超える土地の地雷除去を行い、年間目標の58%を達成すると同時に、3万人以上の人々に地雷リスク回避教育を行い、年間目標の61%を達成したのです。2010年上半期、EMAOは活動する3地域における地雷・不発弾の爆発事故件数ゼロを実現しました。

アファル地域にあるアワシュ橋付近の地雷除去が完了した後には、交通と貿易において重要な役割を果たしているアワシュ橋を架け替えるプロジェクトが日本政府のODAによって計画されています。EMAOは地雷除去活動を通じて、アワシュ橋建設プロジェクトにも貢献していると言えるでしょう。


8.エジプト:アフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター

© UNDP Egypt
アフリカの平和維持活動を支援すると同時に、アフリカで発生する危機や紛争への対処におけるオーナーシップの向上を望むアフリカ諸国の熱意に応えることを目的として、アフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター(CCCPA)が1994年に設立されました。このCCCPAは平和維持活動に携わる全ての関係者を対象として、最新の情報科学技術を用いた総合的な研修コースを提供しています。

2008年4月に日本政府とUNDPによる支援を受けて以来、CCCPAはこれまでに16の研修プログラムと4の地域国際セミナーを運営してきました。31に及ぶアフリカ諸国から参加した受講者の内訳は、59%が民間人、29%が警察官、12%が軍人となっています。またジェンダーの主流化というCCCPAの重点課題に沿って、全受講者のうち女性が占める割合を28%まで引き上げることに成功しています。CCCPAは世界各地にある20の組織と合意を結んでおり、世界規模のパートナーシップの構築に成功しています。2009年10月から新設備の導入を進め、現在では多言語同時通訳機、高速無線インターネット、ビデオ会議設備などの最新技術が導入されています。


9.ブルンジ:選挙技術支援

ブルンジ大統領からの要請を受けて、UNDPは2009年9月から新設の国民選挙委員会(NEC)を支援する選挙技術支援プロジェクト(PACE)を実施しています。UNDPの役割は投票者登録から選挙後評価まで、選挙の全期間を通してNECに技術支援を提供することです。このプロジェクトでは、日本を含む15のドナー国が出資する2900万ドルのバスケット・ファンドを通して、134000の投票箱、130000の投票ブース、8000万の投票用紙など、ブルンジの選挙実施に必要なあらゆる物資が提供されました。

さらに日本政府がこのプロジェクトに対して支援した170万ドルは、1) 有権者が登録データの正確性を確認できるようにするための有権者名簿の開示、2) 350万人の有権者登録カードの準備、3) 国内6969か所の投票所への有権者登録カードの配布、に割り当てられ、350万の有権者による2010年選挙サイクルへの参加が実現しました。選挙サイクルが平和的に運営されたこと、大統領選挙で75%、地方選挙で90%という高い投票率を記録したことは、民主主義と平和の構築に参加したいというブルンジ国民の意志と決意の強い表れであると言えるでしょう。


10.ウガンダ:ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトにおける学校給食

© UNDP Uganda
UNDPは日本政府が主要ドナーとして拠出している「国連人間の安全保障基金」の活用により、ウガンダにおいてミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの中で、学校給食プログラムを実施しています。ウガンダでは普遍的初等教育の政策を進めていましたが、学校給食制度の未整備が、低い就学率の主要な要因となっていました。しかしプログラムの結果、初等教育の就学率は68%(2006年)から89%(2010年)に向上し、対象の21校に在籍する子どもの数は全体で3000人増加しました。7人の子どもの母親であるファウスタさんが「学校給食プログラムは子どもたちのお腹を満たすだけでなく、子どもたちの学習意欲も大きく向上させてくれました」と語るように、子どもたちだけでなく親も学校給食プログラムの影響を実感しています。

教育状況の改善は特に女子児童と低学年児において顕著に現れています。学校給食を通して低学年児の学校教育に価値を見出す親は多く、家庭で弟や妹を世話するために学校に通えない女子児童が減少したのです。UNDPはNPO法人ミレニアム・プロミス・ジャパンの協力を得て女子中等教育を支援する奨学金制度を導入するなどして、ウガンダにおけるさらなる教育普及を目指しています。


11.アンゴラ:地雷除去機関能力向上計画

© UNDP Angola
UNDPアンゴラ事務所は日本政府による資金拠出を受け、2007年から国家地雷除去機関(INAD)能力向上計画を実施しています。アンゴラ政府が力を入れる輸送・通信技術・エネルギーなどのインフラ整備を促進することが、このプロジェクトの目的です。UNDPの専門家はINAD職員とともに地雷除去活動の指針となる標準作業手順書(SOP)を策定すると同時に、広範囲にわたる地雷除去・不発弾処理に関する研修を実施しました。SOP、作業の評価、品質保証の研修を受けたINADの15部隊は、国際地雷対策基準(IMAS)を遵守して地雷除去活動を行っています。

UNDPの技術支援により、INAD部隊の地雷除去の効率性は飛躍的に高まっています。UNDPの専門家が提案した装甲車の利用によって、手作業で数年かかる7.5平方キロメートルの地雷除去作業を2週間程度で終えることが可能になりました。現在、UNDPはINADに機械のメンテナンスと修理を担当するメカニカル・サポート部隊を設置する支援を行っています。


12.モザンビーク:対人地雷禁止条約第5条の期限内達成に向けて

© UNDP Mozambique
日本政府の資金拠出により、UNDPはモザンビークが対人地雷禁止条約(通称オタワ条約)第5条で定められた10年以内に地雷敷設地域における対人地雷の破棄を完了できるように、国家地雷除去機関(IND)の能力向上と地雷除去活動を支援するプログラムを実施しています。このプログラムで地雷除去の技術訓練を受けた人々の中には女性も含まれます。訓練を受けた人々による地雷除去活動を通して、数百万uの土地が農業や交通などに有効利用されるようになりました。地雷除去プログラムの成果はモザンビークの貧困削減やミレニアム開発目標の達成にも貢献していると言えます。

地雷除去機関の現場活動を長期的に支援してきたUNDPは、モザンビーク政府がオタワ条約の定める地雷除去・破棄完了の期限を遵守するとともに、残存する不発弾を処理するために必要な支援の提供を約束しています。現在、地雷除去活動の進捗度は50%を超えており、期限である2014年までに完了される見込みとなっています。


13.ナミビアとニジェール:地域に根差した気候変動適応プロジェクト

© CES (NGO partner) /
UNDP Namibia
干ばつや洪水の深刻化をもたらす気候変動は、開発途上国の貧しい人々にとりわけ深刻な影響を及ぼしており、これに対処する「適応能力」の強化が喫緊の課題となっています。UNDPは2008年より、地球環境ファシリティの小規模無償プログラム(SGP)を通じた「地域に根差した適応プロジェクト(CBA)」を、10か国で試験実施しています。CBAは、SGPを経由した複数ドナーの資金支援により実施されていますが、日本政府の拠出により国連ボランティア計画(UNV)と共に試験実施しているナミビアとニジェールで特に成功を収めています。

ナミビアのプロジェクトは、天水農業に生計を依存する北部5地域を対象に、組合組織化、灌漑技術支援、堆肥化や輪作の導入、乾燥に強い雑穀(ヒエ)品種の普及、家庭用ストーブの効率化と森林再生支援等、6種類の適応戦略を策定し、各地の事情に合わせて適用しています。なかでもカバンゴ地域のSiyaグループでは、これらの戦略を実行した結果、プロジェクト1年目にもかかわらず、雑穀の収量は1ヘクタールあたり70キログラムから570キログラムへと飛躍的に増加しました。

ニジェールのプロジェクトは、同国中部のロンボウ村の3コミュニティ、約6000人を対象に実施されています。同地域は、砂漠化により遊牧・農業が脅かされ、深刻な貧困と食糧不足に直面すると同時に、枯渇しつつある天然資源をめぐる紛争リスクを抱えています。CBAは、持続可能な水資源管理、農業支援、環境課題に対応した遊牧方法の普及、食糧の安全保障および生計向上支援等を推進しました。これには、生育期間の短い品種の導入、植樹、伝統的な井戸の修復等が含まれています。なお、UNVは、本試験事業ではナミビア、ニジェールの他、ボリビア、グアテマラ、ジャマイカ、モロッコ、サモアの7か国において、地域社会の動員、プロジェクトの全関係者の参加促進、パートナーとなるNGOやCBOの能力強化等を担っています。


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