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コソヴォ医療復旧プログラム (HRP)

プロジェクト実施中|資金調達済 2002年9月現在
プロジェクト概略
プロジェクト名 コソヴォ医療復旧プログラム
活動分野 一次医療及び医療施設インフラ
目的 コソヴォにおける一次医療分野の再建とヘルスケアの質の向上への取り組み
対象受益者 総合保健医療圏:地方村民39,500名
保健医療専門化:約50名
実施機関 特別非営利活動法人アムダ(Association of Medical Doctors of Asia)
プロジェクト
実施期間
2001年11月〜2002年11月
ドナー 日本政府(人間の安全保障基金)
プロジェクト
総予算
1,009,866米ドル

背景

コソヴォの医療分野は、紛争中の物理的な破壊のみならず、長期にわたって人員の訓練やインフラ及び機材の維持に向けた投資がなされてこなかったという状況におかれている。

近年、コソヴォの各市町村は、アンビュランタ(村落における一次医療施設及びサービス)と薬局のネットワークを監督する、家族保健センター(FHCあるいはヘルス・ハウス)を一箇所備えている。しかしながら、各センターの診療能力は限られており、多くのケースはより大きな病院に紹介せざるを得ない状況である。コソヴォには308箇所のアンビュランタがあり、約200箇所が正常に機能している。これらの施設は機材(購入後20〜30年)が古く、メンテナンスが不十分な状態にあり、代替部品さえ手に入らないケースもある。紛争による被害を受けていない場合であっても、コソヴォの医療インフラは大規模な修復を必要としている。

第二の、保健医療分野の復旧に関する大きな問題は、公共システムの中で質の高い医療サービスを実施することの可能な人材の欠如である。大多数のヨーロッパの国々では10,000人の住人に対し300名あるいはそれ以上の医師がおり、人間開発レベルが中程度の国であっても133名の医師がいることと比較すると、コソヴォには10、000人の住人あたり78名の医師しか存在しない。一次医療に携わる医師は住人10,000人に対して38.75名である。過去10年間にわたって、保健医療の専門家は最新の知識や医療技術、効果的な診療を行うための設備にアクセスする機会が殆ど無かった。

コソヴォにおけるこのような状況を改善するため、損傷を受けた一次医療施設の復旧と機材の調達、医療スタッフのトレーニング、これまでの費用で維持が可能な保健医療サービスのシステムの確立、及び医療保険の設立が本分野における最優先課題であると保健省は位置づけた。

コソヴォの保健医療システムの復旧は、医師、看護婦、その他の医療専門家が一つのチームとなって取り組む「ファミリー・プラクティス」という方法を基に計画されている。アンビュランタおよびさらに小規模な医療施設にあたるプンクタはこの保健医療モデルに含まれる一次医療施設の一環をなすこととなる。他方、より大きな病院は、二次的レベルの医療に対応し、プリシュチナ大学病院では、第三次医療の提供を行っている。

プロジェクト概要

こうしたコソヴォにおける保健医療の状況を踏まえると、本分野における最優先課題を医療施設の改善と機材の更新、及び一次医療の専門家のための基礎的なトレーニングと特定することができる。従って本プロジェクトの目標を次の3つとする。

プロジェクト目標:
1. 家族保健センターに的を絞り、近代的で機能的な施設を提供することにより、医療サービスの質の向上を図る。
2. 家族診療の専門家の育成を目指した、戦略的かつ十分なサポートを提供することにより、医療スタッフによるサービスの質を向上させる。
3. 特定分野において一般市民の保健に関する基礎的な意識向上を目指す。

コソヴォの住民が、近代的で効果的、安全かつ手ごろな価格の一次医療サービスを受けられるような包括的なシステムを確立させる上記3つの目標を達成するため、本プロジェクトは2本の重要な流れに沿って取り進められる。

保健医療活動:
1. 3箇所の家族保健センター(アンビュランタ)、1箇所のプンクタ診療施設の復旧
2. 世界保健機関(WHO)が実施する家庭医学専門家育成プロジェクトに対して、海外からの臨床医教育指導者を提供する

本プロジェクトの活動は、コソヴォ国連暫定統治機構(UNMIK)の公共保健医療分野における戦略計画の具体的な実施という貢献している。国連開発計画(UNDP)は、紛争後の開発環境下での再建に対する広範囲の経験を生かし、保健医療分野の改善に貢献している。コソヴォの保健医療分野の復旧に向けた共同作業の中で、UNDPの持つ経験と、UNMIKとWHOが提供する一次医療の枠組が、一体化されるであろう。

本プロジェクトは、ぺヤ市(Peje/ Pec)、イストック市(Istog/ Istok)そしてプリズレン市(Prizren)で実施される。以前の施設は全面的に破壊されているか崩壊しているため、全ての施設を新たに建設する。これらのロケーション選定にあたっては、保健省、WHOそして地元関係者との緊密な協議と審査が行われ、医療保険分野で既に実施中のプロセスや今後のニーズにも応えるものとなっている。重要なことは、関連する地方自治体の行政(結果的に公共医療保健施設の運営を担うことになる)が、施設の建設を承認しており、新しい医療施設が今後の保健医療提供を持続可能なものとすることである。建築はUNMIKの基準に厳密に従っており、近代的で手頃な医療保険施設を完成させるため、新たな家具、医療器具、薬剤が提供される予定である。

本プロジェクトの第二の目的はコソヴォの医療従事者の質を向上させることである。これは、現在進行中のWHOによる家庭医学専門家要請プロジェクトとの密接な共同作業によって取り進められる予定である。WHOのプロジェクトと連携することで、海外からの質の高い医師の資格を持った家庭医療の指導者を呼び寄せることで、本プロジェクトの第二段階において将来コソヴォにおける医療トレーナーとなる人々を支援する。海外から呼び寄せる指導者は、WHOが定めるカリキュラムに習熟し、コース内容の実用的な応用方法等に関わる支援を行う。訓練分野として、家庭医学入門、小児保健、性と生殖に関する健康、一次医療に関わる緊急医療、一般的な疾病、精神保健などがある。

パートナーシップ

プロジェクト実施上のパートナーであるアムダは、コソヴォの医療システムの復旧に関する責任を担う保健省及びWHOと密接に連携、協調している。また、本プロジェクトは地方自治体とも密に連絡を取りながら進められており、自治体はプロジェクト完了後、トレーニングの継続と設備の維持に対する責任を負うことになる。このプロジェクトは、国連人間の保障基金を通して日本政府より拠出された100万米ドルによって運営されている。

成果の持続可能性

保健機能は地域にとって必要不可欠な活動の一中心であり、医療施設の維持に必要な支援が確実に受け続けられるように特に配慮している。身近で、安全、衛生的かつ機能的で、地域社会からの信頼によって維持されている保健施設は、コソヴォの将来の世代のための「人間の安全保障」を確かなものにする基盤となる。地方自治体による承認やUNMIKの基準を遵守することで、新しい施設が持続可能な保健システムの一角を担いつづけられるようにした。

現状

3つの家族保健センター、1プンクタ診療施設は建設の最終段階に入っている。

新センターによる裨益者数はぺヤ市、プリズレン市、イストック市の約39,500人
91名の保健医療従事者がこれらの施設により採用
約50名が家庭医学の訓練を受講

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