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パートナーシップ事例:
「北の大地からアフリカへのメッセージ 〜『アフリカの年』50周年を前に〜」開催について

日時:2009年9月19日(土) 14:00-17:00
場所:ホテルオークラ札幌

概要:

 2009年9月19日、国連開発計画(UNDP)と貧困のない世界の実現をめざすNGOのネットワーク「動く→動かす」は、札幌において「北の大地からアフリカへのメッセージ 〜『アフリカの年』50周年を前に〜」を開催しました。「地域社会の視点から、『アフリカ』『国際協力』『国際交流』を考えよう」という趣旨のもと構成された多彩なプログラムに、会場は大いに盛り上がり、ゲストと満場の聴衆の一体感が感じられる、楽しいイベントとなりました。

池田 HIF事務局長とンビラ演奏の瀬戸田さん

 北海道国際交流センター(HIF)の池田誠事務局長によるプロローグでは、スクリーンいっぱいに映し出されるアフリカの大自然と人々の美しい写真を背景に、特別出演の瀬戸田明子さんによる民族楽器「ンビラ」の生演奏も披露され、会場の人々は一瞬にしてアフリカの魅力に引き寄せられました。


 第一部では、『アフリカの課題と魅力』と題し、アフリカ開発についてアフリカ開発会議(TICAD)という日本の「国」としての取り組みを、国連機関とNGOの視点も交えて紹介するパネル・ディスカッションを行いました。ファシリテータ−は、国際機関職員として長くアフリカの開発課題にかかわり現在も活動を続けておられる藤女子大学の箱山富美子教授が務めました。
 UNDPの村田俊一駐日代表は、『アフリカと私たち』をテーマに、モーリタニア産のタコなどを事例にあげながら、遠いようで近いアフリカと日本の関係を紹介しました。また、UNDPの開発事業に通底する人間開発の理念と、2015年までに貧困を半減することを目指したミレニアム開発目標(MDGs)を説明し、多くの開発課題に直面するアフリカに対する国際社会の支援状況について発表しました。外務省の山田彰国際協力局・アフリカ審議官組織参事官は、日本によるアフリカ支援の意義として、世界が直面しているアフリカ問題の解決に寄与することで、日本が国際社会で信頼と尊敬を勝ち得ることができること、天然資源が豊富で9億人もの市場を抱えるアフリカとの経済関係の強化は、アフリカと日本の双方を利するWin-Win関係の構築につながること、などを指摘しました。また、昨年の第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)では、「オーナーシップ」と「パートナーシップ」のスピリットのもと、日本政府として具体的な支援策を打ち出し、それらを確実に実行するために、政府間だけでなく、NGOや民間セクターも巻き込んで話し合うためのTICADフォローアップ・メカニズムを設置したことを報告しました。JICA札幌国際センターの外川徹所長は、日本のアフリカ支援・TICADフォローアップを「実施」する立場から、青年海外協力隊員による「水の防衛隊」などの現場におけるJICAの取り組みを発表しました。また、北海道独自の取り組みとして、北海道大学獣医学部による長年の協力の成果としてザンビアの大学にアフリカ有数の獣医学の研究・教育課程ができたこと、札幌市の近郊に位置する滝川市がマラウィで果樹の接ぎ木や農産物の加工という地元の技術を生かしたマンゴーの生産・加工の技術指導を行っており、現地で大きな効果をあげていることを紹介し、「北海道は官も民も、アフリカへの貢献度が高い」と称賛しました。アフリカ日本協議会(AJF)の林達雄代表理事は、1980年代に飢餓状態にあったエチオピアで医師として奮闘した自らの経験や、アフリカのHIV/エイズ感染者自身による治療薬を手に入れるための闘いなどを紹介し、現場での協力のみならず「声を上げる」ことが、現代の市民による救援活動であると語りました。さらに、MDGsを共通のプラットフォームとして、世界中の人々がホワイト・バンドを身に着け、貧困撲滅への意思表示をしたこと、日本国内でもTICAD IVやG8サミットを通じてこうした運動への理解と関心が高まったことを報告し、参加者にさらなる行動の必要性を呼びかけました。


パネル・ディスカッション第一部
『アフリカの課題と魅力』

 第一部終了後、アフリカで修業を積んだパフォーマンス・グループ「ゴンダブ+ワテテメコ」による太鼓とダンスのパフォーマンスが披露されました。最初のうちは、鳴り響く太鼓の力強いリズムと女性ダンサーたちの本場仕込みのダンスに圧倒されていたスピーカーや聴衆も、やがてダンスの輪に加わり、アフリカの大地の鼓動が会場を包み込みました。

「ゴンダブ+ワテテメコ」のパフォーマンス風景


モデレーターの
箱山 藤女子大学教授

 第二部では、『地域はアフリカとどうかかわるか?:北海道とアフリカ』と題し、「北海道発でできることは何か?」をテーマに、地元北海道の先駆者から活動の報告がありました。モデレーターの箱山富美子教授からは、西アフリカにおけるJICAと藤女子大学による村落レベルの水供給担当行政官の招へい・研修事業や、北海道大学とブルキナファソの国際研究機関による生活循環型の水・廃物利用に関する共同研究について紹介がありました。
 続くパネリストの発表ではまず、北海道国際交流センターの池田誠事務局長が、函館に拠点を置く同センターの活動として、留学生のホームステイ・プログラムを中心とした体験型の国際交流事業を紹介。アフリカとのつながりとして、アフリカからの留学生の受け入れのほか、地元の市民向けにアフリカの料理、ダンス、太鼓などのワークショップ、アフリカで活動している日本人による講演会を開催し、アフリカの文化に親しむ機会を作っていることを報告しました。北海道大学大学院医学研究科国際保健医学分野の玉城英彦教授は、北海道大学大学院ではJICAの協力のもと、特にHIV/エイズ分野でアフリカからの研修生を受け入れており、既に50人以上が本国に戻って活躍していることを報告しました。また、アフリカにおけるHIV/エイズ問題に関して、南部アフリカでの感染が非常に高いことを指摘。「アフリカに投資することは我々の未来に投資することだ、という広い視野に立ってアフリカへの支援や協力を考えてもらいたい」と参加者に呼び掛けました。北海道新聞の田中祥彦記者は、地方紙における国際問題、特にアフリカ問題の報道の現状と課題について発表しました。田中記者は、カイロ支局駐在時代の、ウガンダ北部の反政府勢力や南アフリカのHIV/エイズ状況の取材経験、昨年の北海道洞爺湖サミットの取材経験を語り、地方紙における国際ニュースの報道について、国際面は暮らしや健康の問題を扱う生活面に比べて人気度が低いため、紙面が削減される傾向にあるという現状を報告しました。そのうえで、「日本国内の雇用情勢・経済が悪化し、厳しい状況ではあるが、来年の南アフリカでのワールドカップに向けて、北海道の事象と結び付けた記事づくりを目指したい」と抱負を語りました。富士メガネの金井代表取締役会長は、同社が25年以上にわたって実施し、内外から高い評価を受けている国際協力活動を紹介しました。富士メガネでは、メガネが必要な難民の居住地に社員がボランティアとして直接出向き、検査をしながらメガネを提供する、という取り組みを通じ、専門的技術・知識・人材・製品の提供を無償で行っています。これまでに、27回にわたってタイ、ネパール、アルメニア、アゼルバイジャンなどへのミッションを実施。延べ134名の社員が参加し、約12万組近い新しい眼鏡を提供したという実績を誇っています。活動は単独で行うのではなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと連携し、現地の政府やNGOなど、現地の人々との信頼関係を構築しながら、共同作業で行っていることを説明し、技術移転や人材育成への要請を受けて、タイからの研修生に技術指導をおこなった事例を紹介しました。箱山教授は、パネル・ディスカッションの総括として「(パネリストの)情熱の源はなんだろう、と考えた。私自身がいろいろなところに行って感じたことだが、私たちに情熱を与えてくれるのは、アフリカの人たちが持つ、人間の温かさ、毅然とした誇りを持って生きる強さ、といった、発達した日本では忘れかけてしまっているものを強烈に持った社会とのふれあいであり、それによって私たちはエネルギーがもらえて、いきいきしてくる。みなさんが語ってくださった活動の背景、情熱の背景にはそういったものがあるのではないか?日本国内では経験することができない国際交流をすることで得るのではないか?」と感想を述べました。


パネル・ディスカッション第二部
『地域はアフリカとどうかかわるか』

「動く→動かす」の
稲場 事務局長

 最後に、セミナーの共催者を代表して、動く→動かす(GCAP Japan)の稲場雅紀事務局長が総括発言を行いました。アフリカは、本イベントのゲストに代表されるような多くの日本人を魅了する場所である一方、未だに厳しい現実に直面していることを指摘。現在アフリカを直撃している、食糧危機、燃料危機、世界経済危機は、アフリカに責任のあるものではなく、先進国の一部の人々によって引き起こされた危機である、と述べました。
 圧倒的な豊かさと活力を持ちながら、貧困と飢餓のそこに沈む多くの人々を抱えるアフリカに対して、同じ地球に生きる友人として私たちに何ができるかを考える必要がある、と訴えかけました。「貧困をなくそう、世界を今より少しでも良くしよう、という意思を目に見える形であらわすこと」の大切さを挙げ、誰もが今すぐに参加できることとして、現在世界規模でGCAPと国連が協力して行っているStand Up Take Actionキャンペーンを紹介しました。10月17日の世界半貧困デーに、「スタンド・アップ」する(立ち上がる)ことで、世界でどれだけ多くの人たちが貧困について考えているかを目に見える形でしめし、世界のリーダーたちに貧困問題への一層の取り組みを求めるアクションであり、昨年は全世界で1億1700万人が参加し、日本でも41都道府県で2万2700人もの人たちが立ち上がった、と説明。今年も、10月16日から18日にかけて実施するので、ぜひ参加して欲しいと呼び掛け、会場の参加者は全員立ち上がり、「スタンド・アップ」の予行演習をしました。


 
参考資料: