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オーガニックコットンのビジネスパートナーシップを通じて日本企業がインド農家を支援 【プレスリリース】

2012年8月28日

【ニューヨーク、東京、ニューデリー】
2つの日本企業が「ビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)」に参加し、3万人近くのインドの低所得の農民がオーガニックコットン栽培に移行するのを支援することにより、農民の健康改善と収入増加を実現することを本日、表明しました。

世界的なイニシアティブ(取り組み)であるBCtAは、商業的な成功と持続可能な開発を両立する、革新的なビジネスモデルの構築を企業に促しており、国連開発計画(UNDP)を含む複数の国際機関がこれを支援しています。

日本の総合商社である伊藤忠商事株式会社と、持続可能な原料を使った食事や衣料の提供により持続可能なライフスタイルを提案している株式会社クルック(kurkku)は、オーガニックコットンの生産を増やすことで、インドの農家の収入を増加させ、農民の健康状態と環境を改善することを決定しました。合成農薬や化学肥料を使わずに栽培されるオーガニックコットンは、通常のコットンより30%程度高い値段で取り引きされます。

両社は、オーガニック(有機)栽培されながら認証を受けていないコットンを、通常のコットンよりも高い価格で買い取ることにより、インドの農家が伝統的栽培からオーガニックコットン栽培へと移行することを支援する「プレオーガニックコットン(POC)プログラム」を拡大することを表明しました。オーガニックコットン認証を受けるためには、農家は費用がかかるオーガニック栽培を3年間続ける必要がある一方、この間の収穫は通常のコットンと同じ低価格で売らなければいけないため、このプログラムはオーガニックコットン栽培の推進にとって非常に重要です。

オーガニックコットンの国際認証を受けるまでの3年間、POCプログラムに参加する農家は20〜30%の収入の増加を期待でき、認証を得た後はさらに約12%の収入の増加を得ることができます。

BCtAプログラムマネージャーのスーザン・チャフィンは、「伊藤忠商事とクルックは、企業とコミュニティの両方に価値を生み出す、革新的なビジネスパートナーシップの可能性を示しました。近年では初めてとなる、日本企業によるBCtAへの参加は、インド農家の収入を増加させると同時に、環境的に持続可能な農業に貢献するでしょう」と述べています。

コットン栽培は、インドにおける耕地面積の5%を占めるにすぎませんが、農薬の使用量は全体の50%以上となっています。それが農家の経済的な負担となるだけでなく、農民の皮膚や呼吸器への深刻な健康被害の原因にもなっています。

オーガニックコットンへの移行は、長期的には経済面・健康面でのメリットがあるにも関わらず、多くの農家にとっては、短期的な経済的負担が大きいのが現状です。オーガニックコットンとして認証されるためには、オーガニック栽培を3年間続ける必要がありますが、この間、農家は収穫高が害虫被害などにより20%から30%も減少する事態に対処しなければなりません。また、認証が得られるまでは、オーガニック栽培されたコットンでありながらオーガニックコットンの価格で売ることができないという事態に直面します。こうした損失に加え、認証プロセスにも追加的な費用がかかりますが、開発途上国の多くの農家はそうした費用を負担することが困難です。

65か国に114の事務所を展開している伊藤忠商事は、このBCtAの取り組みを通じて、インドの企業と協力してオーガニックコットン栽培への移行に関心のある農家を特定し、そうした農家に対しオーガニックコットンの種子と研修の機会を提供します。また、(オーガニック栽培されながら3年未満のため認証を受けていない)プレオーガニックコットンを、通常のコットンよりも高い価格で買い取ることを農家に保証しています。さらに、認証を受けるまでの移行期間には認証プロセスにかかる費用を補助し、その手続きを支援します。

伊藤忠商事代表取締役常務執行役員の岡本均氏は「POCプログラムの推進を通じて、当社は環境配慮型ビジネスの実践をサプライチェーンに組み込み、企業市民としての社会的責任を果たすことができます」と述べています。

この度、伊藤忠商事とクルックがBCtAへ参加することによって、これまでの4年間におよぶインド農家とのパートナーシップが拡大し、2015年までにさらに6,000軒の農家がオーガニックコットンへ移行するのが可能になりました。さらに、3万エーカー(1万2,141ヘクタール)の農地で有害な農薬が使用されなくなり、農民の健康が改善される見込みです。

2008年から実施されてきた初期の取り組みを通じて、伊藤忠商事はプレオーガニックコットンの売上を3倍以上に拡大しました。また、クルックの売上高は2007年度と比較して30%増となっています。両社は現在、日本の60のアパレルブランドにオーガニックコットンを販売していますが、2015年までに、5,000トンのプレオーガニックコットンを生産し、アパレルブランドの数を250にまで拡大させる計画です。

クルック代表取締役の小林武史氏は「POCプログラムは、どんな良いことにつながっているか、わかりやすいところが優れていると思います。これまでに4年間推進してきて、私はこのプログラムが人々の信頼を積み重ねながら広げていくことができる、本当によい方法だと確信しています。この度、BCtAに参加することで、このプログラムをより多くの人々に知ってもらい、新しい信頼を生んでいくことで、インドの農家の生活改善に一層つながっていくことを願っています」と述べています。



ビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)について:商業的な成功と開発の成果を両立するインクルーシブビジネスモデルの構築を促進するための世界的なイニシアティブ(取り組み)です。オーストラリア国際開発機関(AusAID)、オランダ外務省スウェーデン国際開発協力庁イギリス国際開発局(DFID)、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)、UNDP国連グローバル・コンパクトクリントン・グローバル・イニシアティブ国際ビジネス・リーダーズ・フォーラムの協力によって推進されています。

伊藤忠商事について:1858年に創業した伊藤忠商事株式会社(本社:東京)は、「Fortune Global 500」にも選ばれた大手総合商社です。世界65か国に114拠点を持ち、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、保険、物流、建設、金融の各分野において、国内、輸出入および三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開しています。(http://www.itochu.co.jp/ja/)

クルックについて:株式会社クルック(本社:東京)は、「快適で環境にも良い未来に向けた暮らし」をコンセプトに、新しいライフスタイルを提案する事業を行っています。アパレル分野では、「プレオーガニックコットンプログラム」の推進のほかに、東日本大震災で被災した農家を支援する「東北コットンプロジェクト」の事務局を運営。食の分野では、生産者の顔が見える食材にこだわったレストランやカフェを8店、展開しています。2011年11月には複合商業施設をオープンするなど、生活を取り巻く様々なシーンで新しい消費のあり方を提案しています。(http://www.kurkku.jp/)

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本件に関するお問い合わせ先
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 広報ユニット(TEL:03-5467-4751)

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