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UNDPの民間セクター戦略

2007年、UNDPは全世界・地域・国家レベルにおけるUNDPと民間セクター協力の枠組みである“包括的な市場の開発(IMD)”の促進を開始しました。この戦略は以下の5つの重点分野によって構成されています。

  • 政策と制度:政策アドバイスと能力構築を通じ、民間企業が活動しやすい法制度環境を構築できるよう現地政府をサポートする。
  • 貧困層向けバリュー・チェーンの統合:地元生産者を国内外の購買チェーンに統合する。
  • 貧困層向け商品とサービス:貧困層にとって購入可能な商品・サービスへの民間セクターの投資を促進する。
  • 起業家育成:小規模事業・起業を促進する。
  • 企業の社会的責任(CSR):包括的な市場の開発(IMD)とミレニアム開発目標をサポートするCSRを促進する。
政策と制度

UNDPが活動を展開をしている多くの国々では、包括的な市場の開発をサポートする政策がほとんど存在しておらず、その結果、市場が既存の格差と社会排除のパターンをより助長している状況です。そのため、民間セクターの拡大が経済成長だけでなく貧困層向けの雇用と消費の拡大に確実に寄与するような政策を、国家政策の枠組みの中に注意深く統合させることが重要となります。この問題に取り組むには、雇用市場を成長させ、所得ピラミッドの底辺の人々(Base of Pyramid:BOP層)が購入できる商品・サービスを提供する新しい市場を創出すべく、政府とドナーが民間セクターと協働しなければなりません。そのためには、政策改革や包括的な政策立案のみならず、市場改善に向けた政府や関係機関の能力育成にも重点をおく必要があります。

UNDPの役割:
こうした目的を達成するため、UNDPは他の国連専門機関や企業開発のためのドナー委員会(DCED)等との協力を通じ、包括的な市場作りのための政策を精力的に推進しています。またUNDPは、雇用と成長を促すための分野別政策、紛争後の民間セクター開発、効果的な法制度と市場規制構造作りのための能力構築、国家政策改革プロセスへの貧困層の意見反映強化のための支援、などを優先して行っています。また、女性起業家のエンパワーメントを促進する政策、制度、システム構築も継続的に提唱していきます。

貧困層向けバリュー・チェーンの統合

市場経済がグローバル化され競合が激しくなるにつれ、貧困層である小規模生産者や起業家を国内外のバリュー・チェーンに取り入れることが貧困削減の効果的な手段であるという認識が高まっています。UNDPは、持続可能な成長を促進し、貧困コミュニティにより高い付加価値と報酬を与える雇用形態への転換を可能にする市場、バリュー・チェーンの開発をサポートしています。特に労働集約型の商品・サービスの市場開発に重点を置いています。

UNDPの役割:
UNDPの包括的な市場の開発(IMD)アプローチは、ミレニアム開発目標の達成に向けて、ビジネス主導の貧困削減を促進しています。まず政府、市民社会、民間セクターとの協議を通じて現場のニーズを把握し、貧困層が生産者、消費者、賃金労働者として活発な役割を担えるバリュー・チェーンの競争力を高めるためのサポートを提供しています。
現在の民間セクター関連プロジェクトのおよそ半数はバリュー・チェーン構築に関連するもので、需要に起因する投資を促進すべく、先進企業(購入者、小売業者、商人、資本供給者)と協働しています。

貧困層向け商品とサービス

貧困削減に貢献する商品・サービスへのアクセスを向上させることは、包括的な市場の重要な側面の1つです。UNDPが活動を展開する多くの国々において、貧困層は、水・衛生設備・エネルギー・情報通信・交通・金融サービス・基本建設資材・医薬品など日常生活に必要不可欠な幅広い商品・サービスへのアクセス向上を必要としています。

UNDPの役割:
国連専門機関・開発援助機関・民間セクターと協働し、UNDPは貧しい人々にとって必要不可欠なサービスへのニーズに対応すべく、投資機会を宣伝・広報しています。この分野におけるUNDPの活動では以下の点に重点を置いています。

起業家育成

包括的市場の開発には、有効な政策と強固な国家制度が必要不可欠ですが、それだけでは不十分です。貧困層が新しいビジネス機会を利用することができ、経済成長全般から恩恵を受けて経済活動の主体となることができる環境を整える必要があります。海外直接投資だけでは貧困を根本的に改善するだけの十分な新しい雇用を創出することは不可能であるため、現地での起業家育成が重要となります。

UNDPの役割:
UNDPのIMDプロジェクトにおいて、起業家育成は重要な課題の一つです。UNDPは、ビジネス環境の改善と包括的市場の開発に意欲がある国において、国連専門機関、政府、市民社会、企業連合、民間セクター関係者と協働して起業育成を推進し、起業家育成の継続的な展開に必要な持続可能な制度制定と、貧困層への能力育成を行っています。バリュー・チェーン構築に関連する多くのプロジェクトに、起業家育成が重要な要素として取り入れられています。

企業の社会的責任(CSR)

企業の社会的責任(CSR)は、グローバルなビジネスコミュニティにおける重要課題として注目されており、現在では多くの企業がビジネスを行う上での重要課題として扱うようになりました。企業の責任ある行動とビジネス活動による社会への貢献に対する期待は、投資家、消費者、コミュニティ、従業員、政府役人等全ての関係者の間で高まっています。UNDPでは、CSRを戦略的な社会投資による慈善事業としてのみならず、持続可能で平等な開発に貢献できるビジネス活動として捉えています。

UNDPの役割:
UNDPのCSRに対する取り組みでは、ミレニアム開発目標達成を促進すべく、多国籍企業から途上国の現地起業家まで、あらゆる規模の企業との活動を展開しています。この分野でUNDPは、1)開発課題やCSRに関する議論に民間セクターの参加を促進すること 2)開発課題解決に向けた具体的な連携プロジェクトに民間セクターの参加を促進すること、を主要な活動と位置付けています。 CSRの実践を促進するため、UNDPは現時点で世界最大のCSRイニシアティブである国連グローバル・コンパクトにおける中心的な役割を担っています。UNDPは40以上の途上国および移行経済国においてグローバル・コンパクトのネットワークを推進しています。これは、企業、市民社会組織、労働者、学識者を集結させる自発的なネットワークであり、官民連携による人権、労働基準、環境問題、汚職対策の協議と行動の促進力となっています。

また、UNDPは現在までに100件以上の民間セクターとの連携を行ってきました。例として津波被害を受けた国々において水衛生システムの復興支援のため、コカ・コーラと協働しました。アンゴラでは、小規模起業開発を促進すべく、シェブロン・テキサコと協働しています。中国では、世界最大の鉄鋼業企業であるArcelor Mittal が環境とエネルギー効率に関する問題に対処するためUNDPと協力しています。