◆ 「パートナーシップ」による相乗効果
UNDP/日本WID基金(以下WID基金)は、国際機関とドナー国政府のパートナーシップの成功モデルです。世界166カ国で事業を展開しているUNDPが基金を運営することで、より多くの国々で、あらゆる専門知識や経験を必要とする分野、海外送金やジェンダー予算など「新しい」分野において、戦略的に選んだパートナーと共にプロジェクトを実施し、グッドプラクティスを積み上げてきました。
UNDPでは、人間開発の根源的な課題である「ジェンダー」への取り組みを年々強化しています。特に、UNDP Gender Equality Strategy 2008-2011(GES)の策定を機に、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを目的としたプログラムや、UNDPの活動のジェンダー主流化は加速度的に進んでいます。この取り組みの中心となっているUNDP開発政策局ジェンダー・チームに所属する専属の担当官がWID基金の管理と運営を担うことで、「ジェンダー」分野における最先端の議論、情報、戦略的パートナーへのアクセスが可能になります。さらに、UNDPが行っている取り組みとの連携を図り、様々な場面でWID基金プロジェクトの成果を発表することで、日本の支援のビジビリティ向上にも貢献しました。WID基金プロジェクトが生み出した知見やノウハウは、UNDPの資金でスケールアップされ、世界規模で波及効果を生んでいます。
2003年からは、WID基金への単独拠出が停止し、UNDP/日本パートナーシップ基金からの案件ベースでの支援となりましたが、WID基金が長年積み上げてきた知見とノウハウは、専属の担当官によって継続されています。今後もGES 2008-2011の実施を通しUNDP内外のステークホルダーに大きく貢献していくことが期待されます。
◆ 効果的な「アプローチ」が成功の鍵
WID基金は、案件の発掘と形成において、「イノベーション」「戦略的パートナーシップ」「対話の促進」「キャパシティ・ビルディング」の4点を重視してきました。その結果、各プロジェクトがこれらの4つの要素を備えています。
■イノベーション(先駆的、革新的な取り組みへの先行投資)
■戦略的なパートナーシップ
■対話の促進
■キャパシティ・ビルディング(能力向上)
イノベーション
- 海外送金、在宅ケア問題、ケア経済、貿易、マクロ経済政策、HIV/エイズと人身取引など、「新たな課題」にジェンダーの観点から取り組む。
- 草の根の女性の「声」と「ニーズ」に対応し、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを実現するための「政策転換」と「社会変革」を促す。
戦略的パートナーシップ
- グローバル・レベル、地域レベル、国及び草の根レベルで、各案件の目的に沿った「ベスト・パートナー」と協力関係を構築し、それぞれの比較優位と専門性を生かしてプロジェクトを実施する。
- UNDPと日本のそれぞれの比較優位を生かした「マルチ・バイ協力」を推進する。
対話の促進
- UNDPの比較優位を活用し、草の根の女性ネットワークと政策決定者との対話を推進することで、草の根レベルと政策レベルを結びつけ、女性たちの「声」「ニーズ」「経験」を国の法的枠組み、政策、制度、事業などに反映させていく。
キャパシティ・ビルディング (能力向上)
- プロジェクト実施国のオーナーシップ、プロジェクト効果の持続性と波及効果を確保するため、政府、地域機構、NGOなど、プロジェクト関係諸機関の「機能強化」を重点的に支援する。
- 「ツール」や「マニュアル」の制作や、Training of Trainers(インストラクターの養成トレーニング)の実施など、能力向上の効果が持続・波及するような支援を行う。
重点分野は、GESのほか、日本・ジェンダー開発(GAD)イニシアティブにある日本の優先課題に対しても重点的な支援を行っています。そのほか、TICAD IV (第4回東京アフリカ開発会議)で採択された「行動計画」の実施への支援も行っています。